『隠し砦の三悪人』
【9月21日追記】 電車は脱線したままだし風邪も引いているので、今日も出かけず溜まった録画を見ることにした。今日見たのは昨日 NHK BS から録ったばかりの『隠し砦の三悪人』だ。もちろんオリジナルの黒澤明版である。
黒澤作品に対する評ではなく、5月に書いた樋口真嗣版『隠し砦の三悪人』の記事の続きとして読んでほしい。
前に記事にも書いたように僕は黒澤明に興味も思い入れもないし、これまでにろくに見たこともないしこれからもあまり見る気もない。ただ、今回は樋口版との違いが知りたくて見てみることにした。
観てみると、なるほどこれはリメイクというほど近くはない。原作を踏まえてはいるけどかなり作り変えてある。それであれだけ面白かったということは中島かずきが如何に優れた脚本家であるかということの証左である。
今さら巨匠・黒澤明を論じようという気もないが、やっぱり50年前の映画というのは古いよね。映画は古びてしまうもんなんですよね。どうしても今の感覚で観るとテンポが遅くてちょっとしんどい。
それまでの標準画面を不自由だと感じていた黒澤が初めてワイドのシネマスコープで撮った作品だそうで、確かに横長の画面を一杯いっぱい使って画作りをしているのは解るが、僕に論ぜられるのはその程度。
藤原釜足と千秋実の百姓2人組が砂地の斜面を何度も滑りながら登るシーンとか、やっぱり今の感覚で観ると冗漫で締まりがないように見えて仕方がない。
結局50年前の作品にしては面白いかなあ、という凡庸な感想しかなくて、恐らく黒澤版はあの当時の一二を争う映画で樋口版は多分今年の20位以内にも入らない映画なんだろうけど、それでもどっち観るかと言えば樋口版を選んでしまいそうだ。
それは、繰り返しになるけど、単に黒澤版が古びちゃったということではなく、中島かずきがよく料理したということなんだろうと思う。森田芳光が『椿三十郎』をほとんどそのままやってそれなりに成功を収めたのと対照的な取り組みだと思う(つまり僕としてはどちらも成功だったと評価しているということ)。
ところで、オリジナルを見れば解けるかもと思ったタイトルの謎は解けないまま。『隠し砦の三悪人』とはやはり三船敏郎と藤原釜足、千秋実のことか? 何故「悪人」なんだろう?
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