映画『闘茶 Tea Fight』
【8月10日特記】 映画『闘茶』を観てきた。日本と台湾の合作。監督は故エドワード・ヤンの愛弟子であるワン・イェミン(王也民)。役者は日本、台湾と香港から(ちなみに日本からほんこんも参加している)。
実は『闇の子供たち』を観るつもりだったのだけど、あのヘヴィーな内容に踏み切れず、急遽予定変更してもうすぐ終映となるこの映画にしたのだが、いや、見といて良かった、この映画。
これは世間的には多分あまり大した評価を得られない映画なのだろうけれど、僕は文句なしに「買い」だと思う。うん、この感覚は高く買うべきである。
僕は映画の記事によく書いているのだが、映画は第一義的に映像作品であると思う。その定義からすると、この映画は端倪すべからざる、本当に油断のならない、息を呑ませるような意欲作である。
構図、色彩、カメラの動き、照明と採光、セットや小道具や衣装の組合せ、特撮、自由自在の編集──どれをとっても見事に刺激的で摩訶不思議で、そして魅力的である。
そして、音。お茶を淹れる時に鳴る音をはじめとして、生活から聞こえてくるいろんな音。映画の中での効果音。そして音楽。ごちゃまぜの音楽。
京都と台湾の景色や色、文化や風俗、そして言語と音楽、そんなもろもろが見事に溶けあって瞠目の映像ができあがっている。お茶という1本の芯を取り囲む形で。
ストーリーは、1行で書くなら「雄黒金茶と雌黒金茶の闘茶の伝説と呪いに端を発した冒険ミステリ」みたいなことになるのだろうが、そのストーリーに対してあまり真剣に取り組んでる印象もなくて、なんだコメディだったの?みたいなところもある。
冒頭で紹介されている伝説の部分がアニメになっているところも、なんか馬鹿にされたような手抜きされたような感じがする(実際にはスタジオ4℃という有名なプロダクションが担当しており、決して出来の悪いアニメーションではないのだが、なんかそんな風に見えてしまう作風なのである)。
筋運びがご都合主義というか、むしろいい加減で、例えば(これは承知の上でやっている遊びなのだろうけど)日本人は日本語を喋り台湾人は台湾語を喋っているのに両者の間でちゃんと意味が通じているのがその最たるものだ。
そして、事の決着の付きようがまた「なんじゃ、それ」みたいな形なのだが、でも、東洋の思想・哲学って最初から枝葉を取り払って最後はものすごく原初的な所に立ち返って「おいおい」みたいな目から鱗の解決点に向かうことって多いじゃないですか。僕はそんな風に好意的に解釈したなあ。
香川照之の巧さは言うまでもないけど、戸田恵梨香が良いよ。ものすごく良い。関西出身なので言葉の問題もなく、とても心地良い響きの関西弁である。香川との絡みもめちゃくちゃ自然だ。
でも、この映画の魅力は出演者の魅力だけでは半分も語り切れないと思う。ともかくこの画を見てほしい。映像作品としてもうめちゃめちゃに面白い!
そしてショーン・レノン他による音楽も素敵。特にエンディングの SUPER BUTTER DOG がビシッと決まっている。
是非とももう1回観てみたい作品である。
ただし、茶道の素養は必要ないけど、お茶が好きでないとこの映画は面白くないかもしれない。そう、おいしいお茶(日本茶でも中国茶でも良い)を飲んだ時って、この映画を見終わった時と同じような感じがすると思う。
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