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Wednesday, August 27, 2008

映画『アクロス・ザ・ユニバース』2

【8月27日追記】 トラックバックしたりされたりしながらいろんなブログの『アクロス・ザ・ユニバース』の映画評を読んでいると大変興味深い。

ま、予想されたこととは言え、全般に若い世代であればあるほど、と言うか、ビートルズを知らなければ知らないほど、この映画の受けは悪いようである。受けが悪いと言うか、メッタ切りにしている記事は見ないのだけれど、今イチ乗り切れないといった感じの文章になっているケースが多い。

まあ、そりゃそうかもしれんわな。ビートルズをあまり知らない人がこの映画を観たらどう感じるのかについては、僕らは分かりようがない。でも、結局そうなのか、って感じ。

うん、曲の知識がないままに単に映画としてこれを観たら確かに乗り切れんかもしれん。僕に言わせると、「ダメですよ、そんな見方しちゃ。あくまでプロモーション・ビデオを見るつもりで見なきゃ」ということになる。これは好きな歌のPV集なのである。

だから、これからこの映画を観ようかどうか迷っている人は、使われている全曲リストをどこかのサイトから取り寄せて、もしもそのうちの3分の2以上を知っているようでなければ、悪いことは言わない、この映画を観るのはおやめなさい、と言いたい。

なんだ、要するにその程度の映画かいって言われると、うん、その程度かもしれない(笑)

でも、映画だと思わずに見て初めて映画としての良さが解るような映画なのである。そして、映画だと思わずに見るためには曲の知識が要るのである。

「もともと1曲1曲が完成した世界になっているものを組み合わせてストーリーを構成しようとしても無理がある」みたいな指摘があるけど、それはその通りなんですよね。

でも、僕らが見ると、それを解った上で、よくここまで作ったなあと感心するのです。

この映画で言うと主人公は Jude なんだけど、ビートルズのレパートリーに Hey Jude 以外に Jude が登場する曲があるかといえばない訳で、他の曲にはまた他の名前が出てきたりして、曲が増えれば増えるほど組み合わせは難しくなるのです。それを、よくここまでやったなあと感心する訳です。感心するためには、他にどんな曲があるのかざっと解っている必要があるということです。

あと、「突然顔を白塗りにした女性が出てきたり、突然水中になったりやたらカラフルで幻想的なシーンに転じたりして、あまりに脈略がなくて訳が分からん」と書いている人もいたけど、ひと言で書いちゃうと、それがサイケなんですよね。

ああいう映像を見て、サイケデリックとかハプニングとかカウンター・カルチャーとかフラワー・ナントカとかいう言葉を思い出し、「ああ、そう、そんな時代だったよな」と思える人しか楽しめないんでしょうね。

64歳と聞いておっ?と思い、ドクター・ロバートと名乗るのを聞いて「来たぞ」と呟き、バスルームの窓から入ってくるのを見てニンマリし、眠るルーシーのシーンで Golden Slumber を連想し、屋上のシーンで Let It Be を想起する──この映画を楽しんだ人たちはみんなそんな風にして楽しんだんだよね。

ボーイ・ミーツ・ガールの典型的ソングというイメージだった I Want To Hold Your Hand が同性への愛の告白に使われ、どっからどう聴いても激しい愛の歌にしか思えなかった I Want You (She's So Heavy) が意表をついて徴兵の歌に化け、一方的に強烈な思いのたけを述べた Oh! Darling が男女の掛け合いに変わる妙・・・。いやあ、面白い。まさに枚挙に暇がない。

あまり楽しめなかった若い諸君、ごめん、君らが悪い訳じゃないからね。

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Comments

いや、この映画のブログの感想10個くらいしか見てませんが、たぶん先輩の、この2の感想がもっとも当方シンクロできます。

リアルタイムで聴いてないとはいえ、基本的に全曲聴いてるのが普通に前提の人間とところどころしか知らん人では、実は、すでに知ってる人もまだ全曲聴いてない人の気持ちにはなれんのだろうなあ、ということです。

ただ、すみません、ちょっと先輩の「僕ら」という言葉に押しつけがましさを感じてしまったのは事実です。

ひとつ、純粋に疑問です、アイワナホールドユアハンドって同性愛云々で使われていました?

あれ単にアメフトやってる学生に片思いしてただけ、って記憶なんですけど。

当方の中ではこことオーダー林が最ももりあがったとこなので、間違った盛り上がり方をしてたのかな、と書き込んだ次第です。


気に入らなかったら消してください。それでは。

Posted by: まちゃみん | Friday, August 29, 2008 01:10

> まちゃみんさん
どうも。そーですね、読み返してみると「僕だけではない僕ら」ではなく「お前らとは違う僕ら」になってますね。すみませんorz
で、僕も最初気づかなかったのですが、パンフによるとあれはアメフトやってる学生を見つめていたのではなく、その学生と親しそうに話をしている女子学生(チアリーダー)を見つめていたのだそうです。プルーデンスが好きだったのは選手のほうではなくチアのほうだったんですね。で、選手とチアリーダーがどうやら相思相愛であることに気づいたプルーデンスは傷心の思いで学校を去ったのです。ちょっと解りにくいシーンでしたよね。

Posted by: yama_eigh | Friday, August 29, 2008 21:27

返信ありがとうございます。
変な書き込みですみませんでした。

当方、見方が浅かったですね。
そういえば、セディの館(?!)でプルードゥンスが
スネてる、みたいなクダリがあったはずですが、
いまいち、はあ? という感じだったのですが、
そういう設定で観ると、なるほど、になるのかも
しれませんね。

いや、一瞬そうだとしたら、作ってるやつが同姓
愛者である意味、毒を盛り込んだ、っていう解釈
なのかな、とも思いましたが、そうではなくて、
冒頭のアイワナ~のところは、「あえて」でやっ
てるんでしょうね。そんで、セディの館での、
あれこれ、がオチだ、という。

普通、なんの前提もなくああいうくだりを見せら
れたら、それは、オトコの子に恋をしてるんだろ
う、って思うのが、自然な見方だと思いますもの。

当方たぶん納得です。ありがとうございました。

Posted by: まちゃみん | Saturday, August 30, 2008 11:32

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