『5分でたのしむ数学50話』エアハルト・ベーレンツ(書評)
【8月6日特記】 『博士の愛した数式』以来、この手の本がやたら目につくようになってきたように思うのだが、本当のところは前からこんな本はたくさん出版されていて、単に『博士の愛した数式』を読んで以来、僕の目にも入るようになったということかもしれない。
本来数学は愉しいものである。それこそ『博士の愛した数式』が出版される随分前から。僕らはある日何かをきっかけに数学の愉しさに気づくのである。学校時代には決して気づかなかった数学の愉しさに。
僕の場合、高校時代数学は苦手科目であったが、どういう訳だか大学に入ってから、そして社会人になってからも何度か数学の愉しさを発見する機会があった。そして、しつこいようだが『博士の愛した数式』は何度目かの再認識の機会になった。それもとても大きな機会に。
この本はそういう再認識を通過した人が読むのが一番楽しいのではないかなと思う。もちろん、いきなりこの本を手にして数学の愉しさを再認識する人もいるにはいるだろうが、それはどちらかと言えば元からかなり素養のあった人だと言えるのではないだろうか。
でも、この本は数学が苦手だった人にはとても歯が立たないような難しい本ではない。大体は解る。いや、誤解のないように書くと、全てがすんなり理解できるという訳でもない。何度読み返しても解りにくいところはある。だが、そういうところは多くない。この難しさの程度が非常にほど良いのである。それがこの本のミソである。
選んでいる分野、関連付けられたトピックス、説明の筆の運び、章立てなどの全体としての構成──このいずれをとってもなかなか適切で、つまり平たく言うと、読んで面白い、読む者の気を逸らさない良書であった。
原書は100話であったとのことだが、残りの50話も読みたくなるような楽しい愉しい数学書である。
Comments