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Sunday, June 15, 2008

映画『休暇』

【6月15日特記】 映画『休暇』を観てきた。

真面目で不器用丸出しの刑務官・平井(小林薫)。彼と再婚する(平井は初婚)ことが決まった美香(大塚寧々)。美香の連れ子・達哉(宇都秀星)は平井に却々なつかない。

平井は達哉との関係は焦っても仕方がなく時間をかけて構築して行こうと覚悟を決めてはいるが、半年前に母が死んだ時に有給休暇を使い切ってしまい、美香との新婚旅行に行くための休みさえ取れない。

そんな時に、死刑囚・金田(西島秀俊)の執行が決まる。その「支え役」を務めれば1週間の休暇が貰える。平井は皆が忌み嫌うその役を自ら志願する。志願した結果、先輩職員の三島(大杉漣)の激しい怒りを買うことになったが・・・。

──死刑をめぐるシステムがこういう風になっているという知識は当然ながらなかった。西島秀俊の好演によって刑を執行される側の心情もよく描かれているが、それは僕らにも全く想像がつかない話ではない。それに対して、刑を執行する係である刑務官たちの胸の内に思いを馳せたことなんてほとんどなかった。とてもショッキングな日常である。

そう、刑務官たちにとっては、これが「日常」なのである。そこがもっとも凄惨な点だ。かなりやりきれない話だ。もうちょっと何かシステムを変更して、刑務官にこんな思いをさせないで済む方法はないのか?──それが映画の前半での専らの感想。

いざ刑の執行にあたって教誨師が出てきてウダウダ言うのも聞いていて本当にやりきれない。

で、そういう風にドキュメンタリ的にはよくできた映画なのだが、映画的にはじゃあどうなんだと言われると、扱っているネタが強烈過ぎるためなのか、あまり際立ったところがない。

まさか「こんな現実を知ってもらいたいがために、この映画を撮りました」なんて言うんじゃないだろうな。そういう映画を求める客もいるのだろうけれど、そういう監督なら僕は見たくない(幸いにして、門井肇監督は「この映画に出てくる『死刑』や『再婚』といったものごとは、あくまで物語のためのモチーフであって、テーマではありません」と語っている。あー良かった)。

でも、そう言いながら、現実の強烈さに負けて映画的な醍醐味が見えてこない。連れ子・達哉も死刑囚・金田も同じように黙々と絵を描いてばかりいるとか、畳の上を這う蟻とか、小道具は適当に効いてはいるんだけど、やっぱり映画的な何かが出てこない。

それが漸く出てきたのは金田が死刑執行された後からである。殺伐としたシーンの連続(平井と美香の式場での打合せまで殺伐としていた)から、漸く少し救いが匂ってくる。絵空事にならない範囲で、ほんのりと救いが醸し出されてくる。

旅館で平井が達哉を抱きしめるシーン、ふとんで美香が平井に言い募るシーン──とても良いシーンだ。そしてトンネル。

最後まで観て良かった。

大塚寧々の連れ子役の宇都秀星と、定年目前の刑務官役の菅田俊がとても良かった。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

犬儒学派的牧歌
アロハ坊主の日がな一日

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