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Sunday, June 29, 2008

映画『西の魔女が死んだ』

【6月29日特記】 映画『西の魔女が死んだ』を観てきた。

梨木香歩の原作小説は読んだ。が、原作を読んだのでその流れで観たという訳ではない。原作の文庫本を買ったのはこの映画の予告編を見たからであり、映画は多分その時から観るつもりでいたのである。

何よりもこの作品の監督が長崎俊一だということが驚きで、そのことが映画を観る一番大きな契機であったかも知れない。予告編を見て僕は思った。

これは従来の長崎俊一のテーストだろうか?
彼もこういうものを作る年齢になってきたということなのだろうか?

僕にとっては『九月の冗談クラブバンド』以来、なんと26年と1ヶ月ぶりに映画館で観る長崎俊一作品である。

この長崎にしても『丘を越えて』の高橋伴明にしても、あるいは『相棒』の和泉聖治にしてもそうなのだが、ここ数年の邦画バブルのおかげで、ここのところインターバルが長くなっていた監督たちが再び地表に這い出てきたのは喜ばしいことだと思う。

さて、にべもないまとめかたをしてしまうと、これは再生の話である。

「私はもう学校には行かない。あそこは私に苦痛を与える場所でしかない」と宣言した中1の少女まい。彼女が(不登校の期間中に)イギリス人の祖母の家で過ごした1ヶ月半の物語である。

祖母は自ら魔女であると言い(映画の中では自分は魔女だという発言よりも自分は魔女じゃないという発言のほうが多く採用されているが)、まいに魔女修行をさせる。それは意外にも毎日を規則正しく過ごし、何事も自分で決めるということから始まる。

その祖母の教えと、ハーブや野イチゴや野菜畑や鶏小屋に囲まれた森の中での生活によって、まいは再生し、すなわち成長して行く。そしてタイトルの通り最後に祖母は死ぬ。

大筋原作どおりに丹念に映像化されている。原作が映画化にちょうど良い短さなのである。ただ、このままでは変化に乏しいので、原作にはなかった郵便屋さんと息子を登場させたりしている。

それから、小説における「行間」を表現するために、ところどころまいの独言風のナレーションとひとりごとの台詞が用意されているが、後者はちょっと余計だったのではないか?「扱いにくい子供…」と彼女に2回も言わせなくても充分伝わったのではないかな、と思う。ただ、作品全体が少ししつこいぐらいに観客に対して丁寧に説明する傾向があったのは意図してのことなのだろうと思う。

僕がまず感じたのは音である。

森の中の家が舞台なので小鳥のさえずり(テッペンカケタカと聞こえるホトトギスが印象的だった)や風にそよぐ葉や草の音などが出てくるのは当たり前として、摘んだ野イチゴをたらいに落とす音、それを洗う水道水の音、そして出来上がった野イチゴジャムをつけたパンに齧りつく音、眠れない寝室の時計の音(その音がフェイドアウトしたときまいは眠りに落ちている)など、いろんな音が効果的に印象的にあしらわれていたと思う。

それからおばあちゃんのしぐさ。まいと喋る時にまいの髪をなでる指。こっちを向かせようと肩に置く手。そして、原作でも非常に印象的だった I know という相槌。

原作どおり、本当に丹念に丹念に映画化されており、どこがどう凄いと説明しにくいのだが、貶すような点もほとんど見つけられない。原作の良さをそのまま映画に移し替えた感じがする。

その成功の源泉はキャスティングだろう。

おばあちゃんにはサチ・パーカー。シャーリー・マクレーンの娘だそうだが、よくまあこんな人を探し出してきたものだ。こんなに魅力的なおばあちゃんが他にいるだろうか?

そしてまい役の高橋真悠。ダンス&ボーカルユニット SPLASH のメンバーだそうだが、本当に良い表情のできる子。素晴らしかった。

そして、圧巻は木村祐一。近所に住む下卑た男で、まいが激しい嫌悪感をぶつける相手なのだが、この悪意の塊みたいな存在を演じられるのは彼を措いていないような気もする。

是非思春期の少年少女に観てほしいと思う。そして、彼らも「魔女の修行をしてみようかな」なんて遊び半分にでも思ってくれたら、おじさんは非常に嬉しいのである。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

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