『植木等伝 「わかっちゃいるけどやめられない!』戸井十月(書評)
【4月6日特記】 戸井十月なんて、もう何十年も前に忘れてしまっていた名前なのだけれど、そうか、最近はこういう仕事もしているのか、という感じ。ただし、この本は戸井の名前に魅かれたのではない。クレージーキャッツのファンなのである。
全盛期のクレージーについてはさすがに僕にもおぼろげな記憶しかないし、当然その時には子供だった僕にはこのグループの偉大さが解らなかった。そんなクレージーを再評価するきっかけを与えてくれたのは大瀧詠一さんだった。
この本の中でも1箇所だけ、植木さんが大瀧さんについて触れているところがある。こういうのを読むと嬉しくなる。
参考文献になっている『芸能ビジネスを創った男──渡辺プロとその時代』(野地秩嘉・著)も読んだし、昨年の5月にフジテレビが2夜連続で放送した『ザ・ヒットパレード 芸能界を変えた男・渡辺晋物語』も見ている(その時の植木役は陣内孝則だった)。
いや、それどころか、TV局なんぞというところに勤めていることもあって、ハナさん、植木さんとは親しくお話したことがある、とまでは言わないが、少なくとも至近距離で彼らのお話を聞いていたことがある。
だから、この本で紹介されているエピソードや植木さんの人となりについては結構知っていることも多くて、だから、この本は僕にとっては必ずしも新鮮な読み物ではなかった。
でも、そんなこと、あまり、関係ないんですよね。
誰が書いたどんな本であっても、どういうエピソードが紹介されていても、なんであれ、それが渡辺プロであり、クレージーキャッツであり、植木等であるということだけで、もう何とも言えない魅力的なコンテンツなのである。
クレージーをほとんど知らないというお若い方。まず、この本からで良いから一度読んでみなよ。そして、興味が湧いたら昔の映画を見てみるとか、昔のヒット曲を聞いてみるとか。
僕の場合は大瀧さんの情報から再評価したこともあって、まずシングル盤を買い揃えた記憶がある。
稀代のスターというのはこういう風にして生まれるのか、と改めて感じる。とても感慨深いグループであり、人であった。植木等さんの体温が伝わってくる本だと思う。
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