映画『チーム・バチスタの栄光』
【3月2日特記】 映画『チーム・バチスタの栄光』を観てきた。
『ルート225』、『アヒルと鴨のコインロッカー』に続いて、中村義洋監督作品を映画館で見るのは3本目なのだが、いやあ、ホントに器用な監督だなあと思う。
成功率60%と言われる心臓手術「バチスタ」を奇跡的に26症例連続で成功させてきた東城大学医学部で突然3例続けて失敗(患者は死亡)という事態が起こる。不審に思ったチーフ執刀医・桐生(吉川晃司)の依頼を受けて院内の聞き取り調査が始まることになり、ひょんなことから不定愁訴外来(院内では通称"グチ外来")の田口(竹内結子)がその担当となる。
田口独りで調べてみても何の手がかりもないところに突如として厚生労働省の技官・白鳥(阿部寛)が調査に現われ、「犯人は手術チーム7人の中にいる」と言う。
──というような説明を読んで、「ふーん、いわゆる医療ミステリか」と思って見に行ったわけだが、もちろん医療ミステリには違いないのだが、「はあ、こんなにコミカルに味付けしてあるとは」という意外感があった。そこがこの映画の一番のミソかなあと思う。
もちろん全編コメディであるはずもなく、シリアスな部分はきっちりシリアスに締め、ハートウォーミングなところも狙い通り作れている。
謎解き役でありながら、通常の映画と違ってエキセントリックな憎まれ役の阿部寛がいて、典型的にボケ役で、周りをほっとさせるキャラの竹内結子が観客と同じ目線でものを見ていて、そのために観客は竹内と一緒になって騙されてしまう。
他にもたくさんいる登場人物がひとりひとり、綿密に詳細に設定され、そして適度にデフォルメされている。そういう登場人物が織りなす群像劇である。ハリウッド映画をめったに見ない僕がこんなこと言うのもなんだが、「ああ、なんかハリウッドっぽい本だなあ」と思ってしまった。
そして、2ヶ所に挿入されているソフトボールのシーンがものすごく異質で妙に心に残ってしまうのだが、その部分だけが非常に日本映画的な感じがする。
白鳥が順番に聞き取り調査をするたびに結構コミカルなやりとりがあり、それに続いて白鳥の大真面目な調査と推理で術中死の"犯人"が一気に明らかになる。
さあ、問題はすべて解決。そのあとの手術が見事成功してめでたしめでたし、かと思ったらちゃんとどんでん返しが用意してある。いやいや、見事な脚本である。
撮影監督の佐々木原保司は、なんと調べてみたら僕はこの人が撮影した映画を映画館で観るのは9本目なのだが、頻繁にカットを切り替えてみたり、大きくカメラを動かしてみたりと結構せわしない展開で楽しませてくれる。
手術用手袋をはめた吉川晃司の手のアップ。ああいう映像ってストーリーの進行上は全く必要がないのだけれど、すごく意味があるんですよね。そういうところをちゃんと押えてあるのが嬉しい。
そして、そういうカットに助けられてという部分も多分にあるのだが、ともかく出演者全員のキャラがはっきり立っていて楽しめる作品だった。特に佐野史郎には「ああ、上手いなあ」と驚いた。
ところで、手術シーンがふんだんにあるので、切ったり縫ったり血が滲んだり、剥き出しの心臓が鼓動したりするシーン満載である。これをじっと見ないと謎は解けないので、そういうのが苦手な人にはちょっとキツイ映画かも。
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