『キャッチボール屋』
【1月6日特記】 WOWOW で録画したままになっていた『キャッチボール屋』を観た。2006年度キネマ旬報ベストテンで第36位に入った佳作である。
高校時代万年補欠だった野球部の同窓会でしこたま酔っ払って目が覚めたら東京の公園で寝てた大森南朋。目の前で「キャッチボール屋 10分100円」という看板を掲げてキャッチボールしている男・庵野秀明がいる。
誘われてキャッチボールした後、庵野に「すぐに戻るから」と言われて訳も分からないまま代役を務める大森。だが、庵野は帰ってこない。公園の売店の女・内田春菊が庵野からことづかっていたという封筒にはアパートの地図と鍵が入っていた。
結局、大森は翌日から庵野の看板とグローブと自転車と、そして住居まで引き継いでキャッチボール屋をやる。意外に客が来る。しかも常連が多い。そして、自分がキャッチボール屋を続けていることを周りのみんなが祝福してくれているようにも思える。
そういう出だしである。
不思議な設定、あるいは非現実的な設定。──どちらに感じるかによって、この映画に対する評価は180度変わってくるのだろう。演劇的な映画である。演劇慣れしていない客には受けないかもしれない。
大森南朋、寺島進、松重豊、水橋研二、光石研──それぞれに癖のある役者がそれぞれに癖のある役を演じている。ある意味で夢のようなキャスティングである。──そう思えるかどうかによってもこの映画に対する評価はころっと変わってくるのだろう。女優ではキタキマユの不思議な個性が光る。
ただ単にキャッチボールしているシーンがやたら多い。で、キャッチボールを通じていろんな人間との不思議な交流がある。野球以外にも小さなエピソードを適当に撒き散らしてある。
問題はこの話をどうまとめるか?
いや、まとめてしまっては終わりなのかもしれない。
終盤の投打の「対決」でやや盛り上がった後、解決めいたことのないまま映画は終わる。終わった後に余韻がある。
良い脚本である。良い映画である。
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