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Saturday, January 26, 2008

映画『陰日向に咲く』2

≪以下は完全にネタばれの記事です。できればこの映画を見終わった人だけに読んでほしいというのが執筆している私の意図です≫

【1月26日追記】 前の記事に書いたように、この映画の中では人物と人物があまりにも安易にあざとく繋がって行くにも拘わらず、観客にそれと気づかせない非常に巧妙な仕掛けがある。

まず初めのほうのシーンで、宮﨑あおいの母親役で宮崎あおいが二役で登場する。これを見てしまうと、母娘を同一人物が演じるのだから当然ひとりの人間の過去と現在は同じ役者が演じるものだと思い込んでしまうのである。

ところが過去と現在の全然関係のないシーンで出てきた伊藤淳史と西田敏行が実は同一人物なのである。全く似ていない役者を持ってきているあたりもちょっとずるいような気もする。

同じように全くつながらないエピソードに出ていた岡田准一と三浦友和が実は親子なのではないかと、こちらのほうはかなりの観客が気づいたのではないだろうか。思ったとおりに素直に親子だったので、むしろこちらの腰が引けたぐらいだ。

こういう容易に想像のつく「実は」と並べて、想像もつかない伊藤と西田が実は同一人物だったという展開が巧妙というか「あらあら」という感じなのである。

そして、そこにはもうひとつ観客を欺くための罠があって、途中に出てくる、西田敏行が実はプロ野球選手の父親だったというエピソードがそれである。観客がそれを信じてしまうと、もう彼が伊藤淳史のなれの果てだという想像は出てこない。

ところが、西田がプロ野球選手の父だというのは作り話だったのである。この種明かしを、映画はぎりぎりまでしない。そりゃあ、あんまりだぜ、という気がしないでもないが、西田敏行が出てきたごく最初のシーンで「このおっさん大ぼら吹きなんだぜ」という台詞をホームレスの同僚(?)に吐かせている辺り、アリバイも万全である。

いやいや見事な仕掛けであった(と言うより、ちょい汚い手のような気もするが・・・)。

しかし、いろんな人物が出てきていろんなエピソードが交錯する中、一番すんなりと心に沁みてきたのはあまり小細工を弄しなかった(ので、映画の中で独立した位置にあった)塚本高史のエピソードではなかったか? 最後のシーンもぐっときたぜ。

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