男子/女子図書委員
【12月4日更新】 学校を卒業してしまうと使わなくなる語彙がある。
例えば「男子/女子」。
小中高とあれほど頻繁に使っていた表現だったのに、性別を表すためにこの言葉を持ち出すことがほとんどなくなってしまう。
「男子トイレ/女子トイレ」という表現は別に校舎内のトイレでなくても使っておかしくないはずなのだが、不思議にそれほど使わなくなってしまう。
あとはプロ・スポーツ選手の「男子プロ/女子プロ」ぐらいのもんだろうか。
それからもうひとつ、「図書」。
これは小学校低学年で習ったから今でもすんなり読めるのだけれど、考えてみれば「としょ」は難読ではないだろうか?
図書室に図書館に図書委員に図書券。よく使った言葉だ。でも学校を出てからは「図書館」くらいしか使い道がない。そしてその図書館にはもう何十年も行ったことがない。
あとは図書カードくらいか。時代の流れで券がカードに化けてしまった。最近では本自体の売れ行きが落ちていて、これもどんどん使用頻度が減ってきているのではないか。
ところで、学校側から宛がわれて、なんとなくよく使っていた「図書」という言葉なのだが、実は僕は正確に意味するところを把握しないままだった。
なんとなく「公共の機関で管理されていて」「みんなが読むために陳列されている」そういうイメージで「図書」という言葉を捉えてきた。
さて、ある時、アメリカ合衆国に「全米図書賞」という名誉ある文学賞があるのを知ったのであるが、この賞の名の原文を見て大いに驚いてしまった。National Book Awards なのである(そしてこの賞を運営しているのは全米図書協会 National Book Foundation である)。
なんと、「図書」とは book、つまり単に「本」のことだったのである。
何故「本」と言わずに「図書」と言ったか?──それは「本委員」や「本館」では別の意味に取られる恐れが高いし、やはり熟語を作るには漢字2字でできた単語を必要としたのだろう。
では何故「書物」(「書物委員」「書物館」)でなかったのか?──「書物」だと「図録」を含まないのだろうか? 「図書」は「図録+書物」なのだろうか?
その辺がよく解らないまま、「図書」という言葉を使わなくなってしまった。考えてみればなんだか淋しい気もする。
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