『模倣犯』
【11月11日特記】 WOWOW で『模倣犯』を観た。今日はドラマW最新作4週連続放送の2週目だが、そっちはパスして今日はこれだけにした。
先週ドラマWで観た『長い長い殺人』(麻生学監督)に続いて宮部みゆき作品である。そして、監督は森田芳光である。ちなみに2002年のキネ旬57位。
彼女の作品は登場人物が多く筋が入り組んでいるので映画化は大変だ。『長い長い殺人』ドラマ評で触れた『理由』(大林宣彦監督)と3つ並べてみると面白い。
『理由』は登場人物が取材を受けるという形で整理して非常に見やすいものになっていた。『長い長い殺人』はちょっと長くてしんどかったが、脚本の友澤晃一は細かい章立てで視聴者に情報を小出しにすることによってその膨大な情報を順に定着させた。
そして、この『模倣犯』では大胆な省略による速い展開で冗漫になるのを避け、解らなくなった頃に回想や繰り返しで時間軸を曲げて繋げることによって観客の理解を助けている。この辺りがやはり脚本も手がけた森田芳光のテクニックと言って良いのだろう。
ただ、それでもやっぱり良く解らない部分はあった。やっぱり映画化するには少し原作のサイズが大きすぎるのかもしれない。
しかし、一方で『長い長い殺人』と違って「長いなあ」という感想を持つことはなかった。これもまた森田芳光がプロである所以だと思う。
で、横で見終わった妻がひと言。
あんまり面白くなかった。
うーむ、まあ、面白くなかったこともなかったが、森田映画としては少しあれかな・・・。でも、これは宮部みゆきの特徴であると僕は思うのである。この特徴は映画化すると如実に表れてくるように思う。
以前ホームページのほうでも書いたことだが、人間を描く高村薫に対して社会を写す宮部みゆきという対比が成り立つ(ま、この説には異論のある人もかなり多いだろうと思うが)。
宮部の描く人間は淡白なのである。これは上で挙げた3つの映画化で見ても共通の特徴だと思う。
この映画で一番立っていたキャラは誰か?
不気味な知能犯を演じた中居正弘でも共犯者の津田寛治でもなく、被害者の祖父である山崎努でも、あるいは被害者の妻でありルポライターである木村佳乃でもなく、犯人に利用される頭の弱い男を演じた藤井隆ではなかったか?
その辺りが宮部作品の宿命であると言うのはちょっと穿った見方かもしれないが、いずれにしてもそういう変なところが際立ってしまったところが、このストーリー、この映画の弱点であるような気がする。
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