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Saturday, October 27, 2007

整理の美学(いや、違うな。そんな大層なもんじゃない)

【10月27日特記】 最近だと佐藤可士和だろうか。世の中では時々『○○の超整理術』という類の本がベストセラーになる。僕はこれをまことに不思議な現象として見つめている。

僕自身はこの手の本については単にタイトルを知っているだけで1行たりとも読んだことがない。それを買おうとか読もうとか思ったことはないし、本屋で手に取ったことさえない。なんでまた整理の仕方なんぞで他人の指南を仰ぐんだろう?と思うからである。

整理の楽しさは整理の仕方を考えるところにある。その楽しい部分を他人任せにしてしまうと、整理は苦役でしかなくなるのではないだろうか?

僕には僕の、君には君の整理の仕方というものがあるはずだ。そして、僕の整理の仕方と言っても、その時僕の周りにどんな物や情報が集まっているかによって、あるいはその時の自分の思考パタンによって整理の仕方は違ってくるだろうから、つまり整理の仕方は変遷するのである。

その変遷がまた楽しい。

そして変遷は途切れ途切れに訪れるのではない。整理をしながら、おっ、こういう風にしたほうがもっと整理がつくぞと気づいて、整理しながら整理法が変遷して行くのである。そこが整理のダイナミズムであり醍醐味である。

そして、僕の場合、それは僕の中で完結するものであって、他人の整理法を参考にしようなどという気は全く起こらない。

もちろん会社の同僚などが資料を取り出すところを観察していて「なるほど、こいつはこういう整理法をしているのか」と思うことはあるが、それは人となりを語る要素として観察対象になっているだけで、なるほどその整理法は良いなあなどと思ったことはないし、たとえそう思うことがあったとしてもそれを自分に移植しようなんて発想にはならない。

そしてそのことの裏返しで、自分の整理法を他人に教えてあげようなんて気も全くない。それが彼ないし彼女にとって参考になるとは思わないし、参考になるとしても教えてあげることが良いことだとは思わない。

職場では僕は多分「整理が得意な人」という印象で捉えられているフシがあるが、別に得意に思ったりもしていない。ただ、整理方法をあれこれ考えるのは好きだし、考えながら整理するのが好きなのも間違いない。それは得意とか不得意とかではなくて自分独りの愉しみなのである。

物理的なもの、電子的なもの、職場にはいろんなフォルダがあるが、暇があればそのフォルダの構造と中身を見直している。自分なりに普遍的な整理の原則などと言えるものは何もなくて、あっちの場合はこういう整理法だがこっちのほうは全然違う整理法なんてことは当たり前で、しかもそれぞれが変遷している。

ともかくその場に最適な整理法を工夫することに歓びがあるのである。その過程に歓びがあるから、そこを他人に尋ねるという発想には何があっても辿り着かない。

仮に僕が片付ける気になれなくて何か放りっぱなしにしているものがあったとして、たとえばそれを見かねた妻が整理してくれたとしたら、それは僕にとってはあまり嬉しいことではない。ただ、逆の場合、つまり僕が妻のものを整理した時には、彼女は素直に感謝してくれる。

それを見ていると、なるほど、整理の過程に歓びを感じない人もいるのだなあと判る。それは譬えて言えば、僕にとって「旅行」であるものが彼女にとっては「移動」でしかないのだな、と思う。

ならば、僕が彼女のものを整理してあげても良い。でも、僕は彼女に整理の方法を伝授しようとは思わない。それは何の意味もないことだ。

だから僕はいつも不思議に思うのだが、こういう本の著者たちは何を思って自分の整理法を披歴するのだろうか。そんなものを他人に教えても実用性もないだろうし副産物があるわけでもないだろう。

でも、書くほうも書くほうだが読むようも読むほうで、単に売れるから書くということはあるんだろうなあ。

ただ、金のためというだけのもんでもないだろう。僕が思うに、そういう本を書く人はひょっとすると本来整理するのが苦手な人、整理に対して明確な苦手意識を持った人なんじゃないかな。

「見てくれ、ほら、こんなに上手に整理できたよ! 今までいろんな整理方法を試したけど、ほら、ここまでの域に達したよ!」──きっとそういう気分でこういう本を出版するのではないだろうか?

それも別に悪いとは思わないが、なんか整理というダイナミズムの一瞬をスライスしただけのような気がする。整理というのはもっと永続的で動的なもんなのじゃないかな?

そして、そのダイナミズムこそが我々を弛まぬ整理へと駆り立てるのだと思う。

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