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Saturday, September 22, 2007

TBS・水トク『巨星・阿久悠の世界』

【9月22日特記】 録画しておいたTBS・水トク『巨星・阿久悠の世界 永遠の歌をありがとう』を見た。9/12(水)放送分。

いきなり窪田等のナレーションに乗ってVが始まる。22時台の番組なら最後までこの形で突っ走る手もあるが浅い時間帯ではそうは行かない。

というわけでスタジオがあるのだが、これが非常に淋しい。中央に鳥越俊太郎、上手に島崎和歌子、下手に長峰アナがいて、他に何もない。バックにMも流れていない。追悼番組であることを意識したのだろうか? それにしても淋しい。

スタジオにゲストが何人が来る。入ってくるところは映らず、CM明け板付きである。次のロールにはもういない。次のロールではまた板付きで別のゲスト。ゲストが紹介されると拍手が聞こえるが、これはSEだ。客入れをしている形跡はない。

こんなブツ切れの番組は近年(の民放)では非常に珍しい。一般的にはゲストはどんどんスタジオに溜まって行くものだ。たいていは前列にMCの3人と一番最後に来たゲスト、後列にそれより前に来てひとしきり語り終わったゲストが座って、時折会話に入り込んで来る。それが近頃のバラエティの文法である。

ところが、都倉俊一が語っている時には森昌子はいないし、森昌子が語っている時には尾崎紀世彦はいない。話は盛り上がらずしずしずと進んで行く。

日本レコード大賞で何等かの賞に選ばれた阿久悠の作品が60曲あると言う。さあ、ここでその60曲のリストが出るかと思うと出ない。

んー、なんだろう? 追悼番組だからそういう演出は外したのか、曲選びと追加インタビューと編集で忙しくてスタジオの演出を考える暇がなかったのか、あるいは他のTVマンとは相当センスの異なる(良く言えば、ありがちなバラエティの文法に毒されていない)人間が作ったのか?

阿久悠と言えば『スター誕生』を外せない訳だが、NTVがTBSに素材を貸すはずもなく、あるいはTBSも借りる気もなかったのかもしれないが、いずれにしても『ザ・ベストテン』と『日本レコード大賞』の豊富なライブラリからほとんどを構成していた。

素材選びと権利クリアはさぞかし大変だったと思う。

選曲はなかなかしっかりしていた。初期の作品が薄かったのは確かだけれど、そんなに流行らなかったものも含めて紹介すべき作品はほとんど不足なく紹介していたように思う。

逆に言うと、僕にしてみると、次から次へと紹介される阿久作品の中に意外性がほとんどない(一方、併記されている作曲者名を見て、「おお、この曲はこの人だったのか!」と思うことはしばしばであったけれど)。既にそれだけ評価の固まった作詞家であるとも言える。

「おや、こんな作品があったのか!」「えっ、これ阿久悠だったの!?」みたいな曲をもっと紹介してみろよ、と思わないでもないが、その方向性が少しでも強すぎるとTV番組としては明確な失敗になってしまう。

ま、一般の人は多分今回のような選曲でも「そうか、これも阿久悠だったのか」などと言いながら見てくれるのだろうなあと思う。

終盤で阿久悠自身が自信作と言っていた作品が4曲紹介される。

  1. 『五番街のマリーへ』(ペドロ&カプリシャス)
  2. 『狙いうち』(山本リンダ)
  3. 『時の過ぎゆくままに』(沢田研二)
  4. 『時代おくれ』(河島英五)

僕は1.を阿久悠本人が自信作と言っていることは知っていたけれど、僕としてはペドロ&カプリシャスの歌では『ジョニイへの伝言』のほうが遙かに名作であると思っている(このことは確か前にもどこかに書いたはずだ)。

それから「阿久悠の作詞の秘密を探る」みたいなコーナーがあったが、これが完全な突っ込み不足というか不完全燃焼というか、いや材料不足だね。こういうまとめ方せずに、単なるエピソードとして紹介すれば良かったのに。

さて、次から次へと曲が紹介され、そろそろ終わり近くなった時間帯。気になるのはどの曲で締めるかである。もうあまりめぼしい曲も残っていないはずだ。

スタッフ・ロールが流れ始めて、おいおいどうするんだ?と眺めていたら、始まったのはペドロ&カプリシャスの昔のV。『ジョニイへの伝言』。

うむ、このディレクター、意外によく解ってる奴かもしれん。あるいは都倉俊一が言ったのかもしれない。Vを引き継ぐ形でスタジオで一人、都倉俊一が『ジョニイへの伝言』をピアノで弾く。歌はない。が、歌詞のテロップは出ている。

なかなか良い演出だ。

思えば都倉俊一は「作詞家・阿久悠に育てられた作曲家」である。彼自身もそのことは認めるはずだ。

彼をゲストに呼び、他のゲストより長い時間を取り、最後に演奏させたのは非常に適切な判断ではなかっただろうか。

確か視聴率的には「そこそこ」であったと思うが、この構成によって番組の出来としては「そこそこ」を超えて「まずまず」であったと僕は評価したい。

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