映画『サッド ヴァケイション』
【9月16日特記】 待ちに待った映画『サッド ヴァケイション』を観てきた。
『Helpless』から11年、『EUREKA ユリイカ』から7年、その両作を織り込んだ、言わば続編である。僕は両方とも観ている。前者は WOWOW で、後者は映画館で。ただし、僕のように観た映画の内容をすっかり忘れてしまう人間はどうすれば良いのだろうか?
憶えているのは『Helpless』が訳分かんなかったこと。『EUREKA ユリイカ』に心を揺さぶられたこと。両方とも圧倒的な映画だったということ。
もちろん、この2作を観ていないと訳が分からない映画ではあまりに間口が狭すぎる訳で、当然両作を全く知らない人でも見られるように作ってある。
むしろ、『Helpless』から浅野忠信が、『EUREKA ユリイカ』から宮﨑あおいが、それぞれの役柄を引きずって連続出演しているだけだ(それを「だけ」と言えるのかどうかは別として)と思えば良い。(宮崎あおい)
映画が始まって暫くは、1カットで撮れるのにあえて細切れのカットを繋いでいるところが、(もちろん時間の経過の省略をそれで表現している場合も多いのだが)なんかとてもイライラするのだけれどこれは狙ってのことなのかなあとか、バックで鳴ってるジョーズハープというモンゴルの楽器が独特だなあとか、そんないろんなことを考えながら見ていたのだが、途中から完全に画面に没頭して何も考えられなくなった。
ふと気がつくと口を半開きにして観ている自分がいた。
僕はこの映画を語る言葉を持たない。あるのはただひとつ、もう一度見たいという思いだけ。できれば、『Helpless』、『EUREKA ユリイカ』、そして本作を立て続けに見てみたい。
青山真治監督作品を映画館で観るのは、『EUREKA ユリイカ』、『レイクサイド マーダーケース』、『エリ・エリ レマ サバクタニ』(これは2回観た)に続いて4本目なのだが、今回の映画が一番凄い。一番の凄味がある。
この映画は"母性"とか"交通"とかいう言葉で括られて整理されているようだ。そのことに異論はないが、1つや2つの単語に集約してしまうとあまりに味気ない。集約できない何かがあってこそ映画なのではないだろうか?
もちろん集約するしないに拘わらず、大きな要素、目立つ部分というものはある。今回は特に脚本の威力が絶大である。この人間に対する洞察力の前に僕は言葉を失うのである。そして、たむらまさきのカメラワークが時々観客を脅かしてくれる。音楽も良い。
複雑すぎるからストーリーはここには書かない。
役者陣もすばらしかった。石田えりはどこかの助演女優賞が獲れるかもしれない。中村嘉葎雄と光石研と川津祐介──この3人の脇役が特に見事だった。地味な脇役でオダギリジョーが出ていたりなんかもする。
いろいろ書いてきてこんなことを言うのも何だが、僕はこの作品を「ここがこうだから良い」ときれいにまとめることができない。なにがなんだか解らない化け物みたいな映画だった。繰り返しになるが、やっぱり僕はこの映画を語る言葉を持たない。いや、この映画については語りたくない気分でさえある。
ただ、僕にとっては間違いなく今年1番の作品だ。ひょっとするとどこかの賞がもらえるかもしれない。もっとも天地がひっくり返っても日本アカデミー賞には選ばれないだろうが(笑)
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