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Sunday, September 09, 2007

映画『ショートバス』

【9月9日特記】 映画『ショートバス』を観てきた。

セクス映画である。女性客が多いのにちょっとびっくり。女性の独り客。カップルなんだけど、あまり気乗りしない男性を女性が引っ張ってきた感じの2人。そして女性2人連れ。

この女性2人連れはレズビアンなんだろうか、とふと思ったりするが、多分違うんだろうな。考えてみれば知り合いにレズビアンの人なんか1人もいない。ホモセクシュアルの男性は知り合いにもいるし、カムアウトはしていないけどホモだという噂のある男性なら周りにたくさんいる。でも、レズビアンだなんて噂になっている女性さえ1人も知らない。

日本ってそういう国なんだなあと思う。

舞台はニューヨーク。

NYの街をCGで描いている。CGと言ってもリアリスティックな奴じゃなくて、ミニチュアを再撮したような、むしろクレイ・アニメっぽいCG。全面的に停電したNYを空撮する予算がない(予算があっても全面停電は無理だ)という事情で採用されたようだが、このアイデアはなかなか良かった。非常にポップなCGだ。

NYのサロン"ショートバス"。そこにはセクスの悩みを抱えた者、セクスをもっと楽しみたい者たちが夜な夜な集っている。そして、場所がNYだけに僕らが知ってるありきたりのセクスだけでは済まないのである。

これは5年前に橋口亮輔監督の『ハッシュ!』を観て初めて「そうなんだ!」と納得したんだけど、僕らは同性愛と言うとどちらかが異性役をやると思いこんでいる節がある。確かに自分は女性なのだ、女性になりたいと思う男性、女装して化粧する男性というのもいるのだが、一方自分は男性のままで単に男性に魅かれるというだけの男性もいるのであって、そういう人たちの場合はどっちかが女役という訳ではないのである。

だから、この映画のようにホモセクシュアルの男性3人のプレイというのも平気で成立してしまう。

今、端的な例として1つだけ挙げてみたが、この映画を見ていると「いやはや、セクスは深いなあ」とため息が出てしまう。そういうシーンの連続である。

ところが、見終わってパンフを開いたら、最初のページにジョン・キャメロン・ミッチェル監督の挨拶文が載っていて、曰く、

みんなはひょっとすると、この映画がセクスについての映画だ、という先入観を持って観に行くかもしれません。でも見終わる頃にはセクスの事なんて全く考えなくなってると思います。

ちゃうちゃう、そんなことあるかいな。セクスが頭から離れまへんがな、と僕はひとりごちたのだが、パンフを読み進むと、確かにそういう感じを持った観客が多かったとのことである。

うーむ、ということは僕だけがセクスに対して自意識過剰ということか? これには参った、と言うよりか、ワロタなあ。

僕の長い人生の中のあるポイントで、

セクスに上手いとか下手とかはないのよ。気持ち良いか、気持ち良くないかだけ。

と言ってくれた女性がいて、それが僕にとってものすごい性的解放になったのだけれど、ミッチェル監督はこういう風に言っている。

僕が唯一言い切れるのは、セクスに対する恐怖は、セクスと直接関連していない様々な問題の源流だということ。

これも確かにそうだと思う。いや逆かもしれない。セクスに対する恐怖の源流は、セクスと直接関連していない様々な問題である。

こういうテーマの華々しさに隠れてしまいがちだが、この映画がちゃんと面白いのは、映像的な魅力がしっかりとあって、映画的な起承転結がきっちり盛り込まれているからである。

出演者による即興オーディションやワークショップを通じて、そこから得られた話をもとに脚本を構成していったという。リー・スックインが演じた、オーガズムを経験したことがない恋愛カウンセラーというのもそんな中から出てきたアイデアだとか。ふーん、なるほどなあと思う。

じゃあ映画を見終わってセクスのあり方についての模範回答が得られるのかと言えばそんなことがあるはずはなく、かといって映画的な効果は明瞭で、そのことを思うと監督が「この作品は 9.11 後のNYが舞台で、人が持つ『繋がりたい』という深い欲求についての物語です」と言っているところに頷けるのである。

ただ、監督も書いている通り、

残念なことに日本の検閲が厳しくてぼかしを入れなければいけない場面もあります。作品のテーマがそういったセクスに対するばかげた恐怖心への反抗なので、これは本当に残念なことです。

という点には僕も完全に同意する。

多分日本人観客の中には「いやいや、ぼかしてあるからこそまだ見ていられるのであって、あれが丸見えだった見ちゃいられないよ」などと言う人もいるだろう。ま、確かに、初めのほうのシーンでホモセクシャルの男性がアクロバティックなマスタベイションをするところなんぞは本当にゲロゲロで、「あそこまで見て、観るのをやめた」という人がいるのも当然だとは思うが、それでもああいうぼかしのオンパレードを見ていると僕は腹が立って来るのである。

良い映画であった。ただし、僕の自意識過剰かも知れんが、これはやっぱりセクス映画ですよ。いやあ、セクスは本当に深い。オープンでフリーなら良いというものではない。ますますセクスについて考えてしまう映画である。

ところで、ラスト・シーンのジャスティン・ボンドの歌は心に沁みたねえ。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

soramove

【註】文中、引用部分も含めて小さいツ(ッ)を用いずに表記しました。

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