映画『彩恋』
【8月24日特記】 映画『彩恋 SAI-REN』を観てきた。飯塚健監督の前作『放郷物語』がすごく良かったから(その映画評はここ)。でも、その後飯塚監督がこの映画を撮ったことは知らなかった。
今朝、アロハ坊主さんのサイト(アロハ坊主の日がな一日)で初めて知って、でも関西では上映しないんだろうなあ、と半ば諦めながら検索してみると、心斎橋シネマートで1日1回だけやっているではないか。しかも、今日が最終日である。電話して聞いてみると 15:10 からの上映。
午後から特に打合せや来客の予定もないのを良いことに、こりゃ急遽半休取るっきゃないでしょ(一応半休扱いにしておいて、夕方会社に戻って来たけど)。
関めぐみ(『恋は五・七・五!』、『ハチミツとクローバー』、『アヒルと鴨のコインロッカー』)、貫地谷しほり(『スウィングガールズ』、『SURVIVE STYLE 5+』、『ナイスの森』、『夜のピクニック』、『神童』)、徳永えり(『放郷物語』、『フラガール』)が扮する3人の女子高生の物語である。
とまあ、キャッチフレーズ風に書けばそういうことになるのだが、これは女子高生のお話に見えて実は家族の話であるというところがミソなのである。
3人とも片親なのだが、それぞれの親との関係が理想的である(貫地谷が演じるココは一時期ヤンキー娘であったという想定だが)。
弟(松川尚瑠輝)に初体験のアドバイスをしてやれる姉(ナツ=関めぐみ)なんてどこの世界にいる? 父(温水洋一)と弟の男同士の関係もコミカルでありながら心温まるものがある。
そして、ココとマリネ(徳永えり、今回は大阪弁だ。これが心地良い)の親同士(奥貫薫と高杉亘)が恋に落ちるというのも非常に微笑ましいエピソードだ。
しかし、話は逸れるが、それにしても上記の3人の出演映画を全部観ている僕も凄いなあ(何が凄いのかは分らんが)と自画自賛してみる。
画が良いんだよね。かなりあざといカメラワークなんだけど考えた跡が感じられる。
役者がいて、役者が喋って、役者が動く──さあ、この役者をどっちからどっちに動かしてやろうか──そこまでなら舞台の演出家も考える。でも、その画をどこから切り取るか──それを考えるのが映画の演出家である。
芝居なら上手から登場した役者の左横顔を観客は見ることになる。しかし、映画の場合はその役者の右の横顔を映すこともできる。上手から下手に歩いて行く役者を真上から追うこともできる。
それぞれの役者のすぐそばには何があり、遠景には何があり、さて、そのどれを一緒に画面に取り込もうか。喋ったり動いたりしている役者を画面の隅っこに追いやって風景を映し出すこともできる──そんなこんなを考えるのが映画の演出家であり、それを観るのが映画の観客の醍醐味であると思う。
この映画はそういうことを非常に感じさせてくれる(逆にそういうレベルに達しないまま映画を撮り続けているのが例えば三谷幸喜だと思う)。
そして、この映画の魅力は、生活に対する、人生に対する、人間に対する肯定的な態度である。ポジティブなパワーが溢れている。
先に言っておくと、この映画は概ねハッピーエンドである。そりゃまあ人間生きて行く上ではいろんな困難があるのは当たり前だし、思い通りにならないことも多い。
落ちちゃうときは何べんでも落ちちゃうし、できちゃうときはできちゃうし、死んじゃうときは死んじゃうし、立たないときは立たないし、行っちゃうときは行っちゃう。それはどうにもならない、でも、そういうのを家族や友だちのパワーも分けてもらいながら、何とかかんとかこなしたり越えたりして、概ねはハッピーに暮らして行けるのである。それが人生に対する肯定的な態度の力である。
だから元気の出る映画なのである。前作と比べてギャグっぽい要素も多くて、それが少し滑り気味とのところもあるが、それでもこの映画の芯はすっくと伸びている感じがする。
音楽の使い方も非常に巧いし、話の進行はちょっと無理やり感があったりもするんだけど台詞回しはとてもスムーズで、うーん、何て言うんだろう、決して賞を獲ったりする映画じゃないと思うんだけど、非常に捨てがたい味があるんだよね。B級なんだけど気になって仕方がない監督。
って、一生懸命褒めても今日で終演なので、今度飯塚健という名前を見つけたら皆さんもぜひ一度ご覧になってください。捨てたもんじゃないよ。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。


Comments
ご無沙汰しております。
僕の記事を見て、映画館に向かってくれたことと、
会社より趣味を優先するyama_eighさんのスタンス。
うれしい限りです。
僕も勤め人の時はそんな人間だったので、共感します。
飯塚健監督、本作もなかなかよかったですね。
次は、ちょっと趣の異なる(例えば男子が主人公)作品を観てみたいですね。
Posted by: アロハ坊主 | Friday, August 24, 2007 at 22:59
> アロハさん
アロハさんがこの日に記事をアップしてくれてなかったら僕はこの映画を見逃してました。どうもありがとう。
> 次は、ちょっと趣の異なる(例えば男子が主人公)作品を観てみたいですね。
そうね。あるいは中年が主人公とかね。
Posted by: yama_eigh | Sunday, August 26, 2007 at 12:12