『ウォーク・ザ・ライン 君に続く道』
【8月5日特記】 3月に WOWOW から録画して、そのままほっぽらかしにしてあった『ウォーク・ザ・ライン 君に続く道』を観た。
映画の出来がどうかなどということに全く気を取られずに、最後まで没入して観てしまった。
ジョニー・キャッシュというのは僕が音楽面で物心ついた時には既に名をなした歌手であり、当時の僕らからすればかなり年配の歌手だった。以来、ほとんどまともに聴いたことがない。
ジューン・カーターのカーター・ファミリーという名前は、ギターを習うとき必ず出てくるカーター・ファミリー・スタイルというピッキング法の担い手として知っていた。歴史的にはスリー・フィンガーの1世代前のスタイルである。彼らの歌声は、マザー・メイベル・カーターを始め、後に何度か聴いたことがある。
その、ジョニー・キャッシュとジューン・カーターの間にこんな恋の物語があったとは知らなかった。と言うか、元々あまり馴染みのなかった歌手なのであり、この2人が結婚していたことも知らなかったし、全体に知らないことばかりが飛び出してくる。
僕の頭の中でジョニー・キャッシュという名前は典型的にカントリーというジャンルと結びついていたのだが、この映画の中で初期にはこんなロックン・ロールっぽいものをやっていたということを知った。
そして、佐野元春の『Do What You Like』の歌詞に出てくるジェリー・ルイスが同じツアーで回っていたとか、ティン・パン・アレーのファースト・アルバム『キャラメルママ』で松任谷正隆がやっていた『ジャクソン』がジョニー・キャッシュのナンバーだったとか、エルビス・プレスリーとジョニー・キャッシュが同じ舞台で交差していたとか、次々と知らないことが出てくる。
しかし、それにしても、ポップスターというのはどうして皆こうなってしまうのだろう?──酒と麻薬と女。自棄になって暴れて、家庭はぶっ壊れてそのうち離婚、やがて覚醒剤が見つかって逮捕・・・。
その裏には、と言うか背景には、と言うか遠因として、小さい頃のトラウマがある。親や大人たちの不用意な言葉で深く傷ついた体験。僕自身も似たようなことを思い出す。そして、兄の事故死。
そして、昔っから好きだった、ファンとして好きだった大スターのジューン・カーターへと話は繋がって行く。
何度も肘鉄食わせながら、不思議にジューンはジョニーを見捨てない。40回のプロポーズの果てに遂にジョニーの妻になる。結局話はそういう良いところに収まる訳だが、見ていて感じるのは「人間って良いなあ」ではなく「音楽って良いなあ」なのである。
音楽は人を救う。そう、僕も何度か救われたことがある。そして、この映画もきっと観ていた誰かを救ったのではないだろうか。
【自己レス】
どうも、この映画のジェリー・ルイスと佐野元春の歌詞に出てきたジェリー・ルイスは別人のようである。
立ったまま乗り乗りでキーボードを弾くジェリー・リー・ルイスと、ディーン・マーチンの相手役として名を馳せた映画スターのジェリー・ルイス。
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