ドラマW『チルドレン』
【8月16日特記】 WOWOW のドラマWアンコール『チルドレン』を観た。初めて観る源孝志監督作品。
伊坂幸太郎の小説は良い意味でも悪い意味でもおとぎ話みたいなところがある。いや、実は『重力ピエロ』1冊しか読んだことがないのだが、先日映画館で観た『アヒルと鴨のコインロッカー』も、この『チルドレン』もいずれも似たようなテーストがある。
よくできた話なんだけど、全部聞き終わってしまうと何だか巧いこと辻褄を合せた大ボラのような気がしてくる。いや、ホラと呼ぶよりもやっぱりおとぎ話なんだろうなあ。
銀行強盗の人質になるという極めて非日常的なシーンから始めて、これはその手の犯罪映画かと思わせておきながら、その人質の中から家裁に勤務する2人の男(坂口憲治、大森南朋)と本屋の店員(小西真奈美)を選んで、彼らの日常生活に一気に引き下ろしてくる。──冒頭、非常に面白い作りである。
そして、同じ裁判官(?)でも全くタイプの違う2人を対比させ、そこに何だかよく解らない「過去」を背負った女性を絡ませてくる。──非常に巧い展開である。
万引きだったり援交だったり、いろんな犯罪に手を染めた少年少女たちの話を家庭裁判所で親身になって聞いてやり、たいていは騙されるか裏切られる。そんなエピソードがいくつかあって、ラストのシーンで「でも、裏切られるのと騙されるのとでは違うんです」という坂口の台詞に繋がってくる。
そして、そんないくつかのエピソードにまたもうひとつ事件が絡んで来る。ここまで来るともう出来過ぎ。でも、確かに出来過ぎなんだけど、そのストーリーに心地よく身を任せてしまう。エピローグでは小西真奈美もなんとなく再生の兆しが見えるし、ま、いっか、となって「おいおい、おとぎ話かよ」というぼやきはどっかへ飛んでしまう。
そういう風に書くと、原作だけしか褒めていないように読めるかもしれないけど、このストーリーにまったく邪魔にならない形で巧く映像化してある。
随所に凝った画もあるのだが、あざとは感じさせない。それと、この手の映画では繋ぎ方が下手で何が何だか解らないうちに終わってしまうことも多いのだが、この映画の場合は編集も非常に適切だと思う。
騙されたような気がしないでもないんだけど、でもやっぱり見終わって気持の良い映画だった。何と言っても大森南朋が良い味出しまくり!
僕にとっては、もう一度見たいという気持ちが強烈に起こる映画ではない。でも、もう一度見ても良いかな、と、ふとそんな風にも思える映画だった。
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