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Saturday, August 11, 2007

映画『天然コケッコー』

【8月11日特記】 映画『天然コケッコー』を観てきた。関西では今日がやっと初日である。

山下敦弘は『リンダ リンダ リンダ』まではよく知らない監督だったのに、あの1本で嵌ってしまい、以後ずっと見ている。

小川真司プロデューサの作品もよく見ていて、パンフの略歴で挙げられている9本の映画のうち7本を映画館で見ている。(TV等で見たものを含めれば8本になる。ちなみにその8本は『ピンポン』、『ジョゼと虎と魚たち』、『恋の門』、『約三十の嘘』、『真夜中の弥次さん喜多さん』、『メゾン・ド・ヒミコ』、『ハチミツとクローバー』、『しゃべれども しゃべれども』)

そして、脚本家は『ジョゼと虎と魚たち』、『メゾン・ド・ヒミコ』(ともに犬童一心監督)で知られる渡辺あやだ。この渡辺あやがくらもちふさこの原作漫画に相当の思い入れがあったようで、原作の台詞をほとんどそのまま残したまま再構成するという荒業をやってのけているらしい。あれだけ斬れる言葉を書く渡辺がそこまでやるというのは、彼女が原作の台詞にそれだけの切れ味を感じていたということなのだろう。

ちなみに僕が見たのと同じ回に同じ映画館で見ていた女性客のひとりが原作漫画の熱狂的なファンらしく、終わってからしきりにぼやいていた。

たくさんあるエピソードのうちから1つか2つを取って来て映画にすれば良いのに、少しずつ集めてきて2時間にしようとするからものすごくもったいないことになっていた。あ~あ、がっかりした。

原作を全く知らない僕は「なるほど」と思うしかないのだが、でも映画としてはかなりバランスよくまとまっていたと思うよ。うん、なかなか良い出来だった。

冒頭の風景の短いカット×5。これだけで簡潔に土地柄と季節の説明をして、鶏がコケッコーと鳴いたところでタイトル・ロゴが被ってくる。なかなか手際の良い出だしだ。

だが、こういう田舎の物語というのは下手すると「やっぱり田舎は良いなあ」で終わってしまう危険性があり、大変難しい。旅行で来てしばらく泊まるのなら気分も変わって楽しいかもしれない。しかし、ここで暮らすとなると、特に東京から転校してきてこんな何もないところで暮らすとなると、結構頭が痛くなったり吐き気がしたりするもんだ。なにしろ女の子の一人称が「わし」であるような土地である。

不思議なことに大沢広海(岡田将生)に関してはそういう面がほとんど描かれていない(原作にもあまりなかったのかな?)。だから、僕は少し心配になったのだが、ストーリーはすぐに語り手である右田そよ(夏帆)と広海の淡い恋、いや、ひょっとするとまだ恋以前の恋に至る道の描写に移って行くので少し紛れる。

主に2人の男女中学生の話である。小中学校は1つになっていて全校生徒が7人しかいない田舎の話である。大したことが起こるストーリーではない。

でも、そんな、大したことが起こるストーリーでもないものを選んだこと自体が凄いと僕は思う。この作品を映画にしようと考えた時点で、この映画の製作者たちは僕ら一般の観客より遙か先へ行ってしまっているのである。

それは中学生という、ある種多感な、でも恋に対してはまだ少し鈍感な(あるいはどうして良いか判らない)、微妙な微妙な時期である。自分の周りも自分自身も色合いが仄かに移ろって行くのをなんとなく体で感じ取ることができる、そういう不思議な年代である。

その不思議な移ろい感が非常によく伝わってくる映画だった。さまざまなエピソード(その中には子供たちにはイマイチ解らない大人のエピソードもある)を重ねて、ぼんやりとそれは漂ってくる。

そして、主役の夏帆を可愛く撮るということも忘れていない。そして、どの風景もとても綺麗だ。月並みな表現だが大変印象に残る映画だった。ややご都合主義的な展開が気になる部分もあったが、これだけ印象に残る作品になったんだから、それで良いような気もする。細部を貶す人もいるだろうが僕は概ね満足である。

松田先生役の黒田大輔の如何にも人が良さそうな演技と、郵便屋シゲちゃん役の廣末哲万の怪優ぶりがやたらと目立った映画だった。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

犬儒学派的牧歌
APRIL FOOLS
きりぎりすな日々-2

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Comments

こんばんは、トラックバックありがとうございました。
私は、この作品にはさほど期待していなかったのですが、そのせいか、思った以上の満足感を得られて、幸せなひとときを過ごすことができました。
話は変わりますが、予告編で流れていた荻上直子監督の『めがね』も、前作のテイストを踏襲しているだけのような気がして、あまり興味をそそらないのですね。でも、実際に見てみると良い意味で期待を裏切られるんじゃないか、そんな期待を少し抱いてしまいます。

Posted by: 狗山椀太郎 | Monday, August 13, 2007 21:04

> 狗山さん
『めがね』ね。予告編だけ見るとちょっと期待外れかなという感じ、ありましたよね。『バーバー吉野』=>『恋は五・七・五』=>『かもめ食堂』と、まるで倍々ゲームみたいに存在感と完成度を高めてきて、この辺でちょっと壁にぶつかるころかも。でも、いずれにしても観ますけどね、好きな監督だし。

Posted by: yama_eigh | Monday, August 13, 2007 23:02

リンクを辿ってやって参りました。

私も熱狂的な原作ファン(笑)ですが、この映画は絶賛したいと思います(元々は映画化反対でしたけど;;)何しろストーリー云々より、この作品(原作)が持つ空気感が伝わるかが最大のネックでしたから…。

蓋を開けたらこの高評価。スタッフの方々に、そして映画に感動して下さった方々に、お礼が言いたい気分です(笑)

Posted by: N耳 | Tuesday, August 21, 2007 16:22

> N耳さん
あ、そうなんですか。別に原作ファン全員が業を煮やしている訳ではないのですね。高い評価をしておられる方もいらっしゃる。しかも、「基本はくらもちふさこ啓蒙サイト」を運営していると言い切るような方が(笑)
原作と同じ空気感がこの映画に流れてるんですね。うん、だから山下敦弘監督の個性がやや後ろに引っ込んでる訳だ。
内容的に一番近い「感想その2」にTBさせてもらいました。

Posted by: yama_eigh | Tuesday, August 21, 2007 16:52

TBありがとうございます。
気を使わせてしまって済みません。関連記事が沢山あるもので…(^^;)
こちらからもTBさせて頂きましたので、宜しくお願いします。

>原作ファン全員が業を煮やしている訳ではない
はい。少なくとも私の回りのファンは、皆高い評価をしております。
映画を見れば、スタッフがどれだけ原作を尊重し、愛してくれたか分かりますから(^^)

Posted by: N耳 | Tuesday, August 21, 2007 21:21

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