『奇談 キダン』
【7月16日特記】 4月に WOWOW から録画したままになっていた『奇談 キダン』を観た。
目当ては小松隆志監督である。『幸福な食卓』で初めて知って、『幸福な食卓』があまりに素晴らしくって、その小松監督が『幸福な食卓』の1本前に撮ったのがこの映画であるのだが、見てみると同じ監督が撮ったとは思えない、全くタイプの違う映画であった。
プロデューサーはあの一瀬隆重である。そして、案の定ホラーっぽい始まり、だが、ホラーではなさそう。いきなり切支丹の歴史がナレーションで語られている。何それ?
主人公は民俗学専攻の大学院生・里美(藤澤恵麻)。小学1年生の夏休みに渡戸村の親戚の家に預けられていたがその記憶がない。だが、当時の新聞記事には神隠しから生還した少女として里美のことが書かれている。
そして、里美は最近決まって同じ夢を見る。遠くから少年が手を振っている夢──。
渡戸村が隠れ切支丹の里と知って、記憶の断片が少しずつ繋がる。遂に里美は決意して渡戸村に向かう。そこには考古学者の稗田礼二郎(阿部寛)も来ていた。
そして渡戸村には村の人間が語りたがらない「ハナレ」と呼ばれる閉鎖された集落があった。キリスト教の禁教が解けた時信者は全てカトリックに戻ったが、ここの住民だけは隠れ切支丹のまま昭和を迎えてしまい、教義は変形してもはやカトリックから見ても異教に近い。
しかも、近親婚を繰り返したせいか、ハナレの住民の知能は全員7歳程度だと言われる。彼らは死なないという噂もある。
そこへ持って来て、かつて大量処刑が行われた山の上で、ハナレの住民が磔死体となって発見される・・・。
とまあ、なんともおどろおどろしい映画なのである。
面白いと言や面白い、なんじゃそりゃと言やなんじゃそりゃ、みたいな感じでついつい油断して観てたら、最後にものすごいことになってきた。ま、これからDVDなどで観る人もいるだろうから書かないけど、こりゃ途轍もない稀有壮大なストーリーである。ちょっとびっくりした。
突然出てきたCGも見事に功を奏している。なんかよう解らん点は二三残したままだが、でもなんだか圧倒的な宗教スペクタクルである。んで、文字通りの「奇談」なのである。
この映画一体どういう上映のされ方をしたのだろう?
なんで話題にならなかったのかな?
高く評価されるかどうかはともかくとして、少なくとも評判になってしかるべき映画だと思う。ちなみにキネマ旬報では2005年度の第81位である(ったって1人の審査員が2点をつけただけ。でも1点でないところが、なんか如何にもこの映画らしい)。
素材となった物語の凄さが際立って映画の演出どうこうではなくなってしまった。ちなみに原作は諸星大二郎の漫画。
ハナレの住民・重太役で神戸浩が出ていた。贔屓の役者である。7歳程度の知能しかないとは、彼のために作られたような役であった(笑)
閑話休題。観て損はない作品ですよ。
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