『時代を創るガールズ・カルチャー』渋谷トレンド研究会(書評)
【7月15日特記】 僕は時々この手のファッション観察・分析・総括ものの本を買う。時々と言っても年に1冊ではなく平均すると数年に1冊くらいのペースである。
これまでに買ったこの手の本ではストリート・フォトグラファーの栗本信実氏が1970年から1988年にかけて日本中の少女たちを撮影した『おしゃれ少女図鑑』や、西武系の月刊誌アクロスが1980年から10年間、渋谷・新宿・原宿の3ヶ所で定点観測した考現学統計の集大成である『東京の若者』などが面白かったが、いずれももう手に入らないだろう。
さて、この本は長年に渡ってガールズと企業の橋渡し役を果たしてきたアイ・エヌ・ジー社による渋谷ガールズの読み解き本である。よくまとまって分析も深く、構成も巧みで読み物としても面白く、さすが餅は餅屋である。
イラストがあり解説文があり脚注があり、座談会もあれば統計資料もある。こういう一見浮ついた商売をしている会社が出す本だから文章も軽いのではないかと思いがちだが、コラムのパートを読めば判るように、指摘が正確であると同時に表現も非常にしっかりとしている。
ひとつだけ象徴的に例を示せば、僕はガールズの生態を述べた本の中で「極北にまで推し進めた」(165ページ)なんて表現に出会うなんて思ってもみなかった。
論の進め方にしても、女子高生のうち彼氏がいるのが3割程度というデータを見て「意外と古風だ」などと思うのは性急で、彼女たちが何を以て「彼氏」と認定しているかから見て行かなければならないとするなど、極めて公平で落ち着いた考察をしている。
資料的価値も高くミーハー的にも面白く、これは結構、後から時代を振り返るときにお宝めいた本になるぞという気がする。
本が溜まればどんどん処分してしまう僕だが、この本は僕の本棚では前掲の2冊の隣で永久保存されることになるだろう。
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