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Sunday, July 22, 2007

検索はパノラマ・ハウスへの道

【7月22日更新】 昔は「待てば海路の日和あり」とか「犬も歩けば棒に当たる」などと言ったものだが、ただ茫然と待っていたり漫然と歩いていても僥倖には恵まれない。では、何をするべきか?──今の世の中では検索である。

で、上の「僥倖」が何を指しているかと言えば、マザー・グースの『PANORAMA HOUSE』が紙ジャケCDで再発売されていたということである。

デビュー・アルバムである『インディアン・サマー』のほうは90年代初頭にCDで再発売された折に抜け目なくLPから買い替えたが、この『PANORAMA HOUSE』のほうはもうデジタル盤で発売されることはないだろうと諦めていたのである。

当然LP盤では所有しているのであるが、僕はもうプレイヤを持っていないので聴くことさえできない。

すると会社の部下がLPプレイヤを持っていて時々CDに落としたりしていると言うので、悪いけどついでにこれもダビングしてくれないか、と会社に持って行ったのである。

当然のことながら彼はマザー・グースなどというバンドは知らない。でも、なんか聞いたことがあるような気がしたらしく、いきなりググリ始めた(僕の部の連中は知らない言葉に出会った瞬間に Google の検索窓に打ち込んでいることが多い)。

横で見ていた僕は「単に"マザーグース"で検索すると、有名な英国の童謡が出てくるのでそれではダメ」と、"マザーグース フォーク"で検索したら、いきなり Amazon でヒットしたのである。で、1クリックで即買い。「ダビングはもうしなくていいわ」。

マザーグースは1976年から78年まで活動していた(あえて「活躍した」とは書かない)女の子3人のバンドで、うち2人がギタリスト、残る1人がパーカッションとハーモニカという変則的な(即ちベーシスト不在の)構成である。

3人とも作詞作曲を手掛け、交互にボーカル/コーラスを担当する。

3人のうち金田真由美が一番女の子っぽい、悪く言えば幼稚な、解りやすく言えばメルヘンな詞を書き、声も甘えた感じの舌足らず。高田幸枝は逆に大人っぽく、アンニュイ、ブルージーな詞を書き、曲のほうもその詞にマッチしたカントリーっぽい、ブルースっぽい作品を残している。

そして、もうひとりの京田由美子。3人の中でも一番多くの作品を手掛けている。声は凛として、でも微妙にハスキーで、それでいて伸びがある。詞は格調高く、曲は大胆である。

彼女たちの曲調をどう総括するか? ライナー・ノーツには「当時全盛だったティン・パン・アレイ的なポップ・ソウル」などと書いてあるが、僕はもっとウェスト・コーストの風を感じるし、カントリー・ロックとも言えると思う。

彼女たちの音に惚れ込んでジャケットの絵を描いた松任谷由実は「透明感!」という言葉で表している。

2枚のアルバムを通じてバックアップしてきたメンバーは吉川忠英であり、ラストショー(村上律、Dr. K こと徳武弘文、河合徹三、島村英二、アリちゃんこと松田幸一)である。このメンバーを見れば(解る人には)音の感じが解るだろう。

この『PANORAMA HOUSE』CD版にはボーナス・トラックとして「マリン・ブルー」のシングル・バージョンがついている。これは今回初めて聞いたのだが、アルバムに収録した後、山下達郎の編曲・プロデュースで再録音したものである。

メンバーは山下達郎のほか、林立夫、細野晴臣、坂本龍一、鈴木茂、中野督夫、浜口茂外也。オリジナルより少しスローテンポになって音が厚くなっている。いかにも山下達郎らしい都会的な作りである。

さて、僕が何故これほどまでにこのバンドに魅かれるかと言えば、それは1も2もなく京田由美子の作曲能力に尽きる。

彼女の繰り出すメロディ運びとコードの組み立ては、当時の僕らがどんなに頑張っても真似のできないものだった。お洒落で時として奇抜で、でもポップの枠を外れない。そのセンスがあったからこそ、これだけのアシスト・メンバーが集まったのだと思う。

コーラスもこのバンドの売りの1つで、時々女子高のコーラス部みたいになってしまうこともあるが、総じて綺麗なハーモニーである。

ファースト・アルバムに収められていた「ミュージシャンをやっつけろ!」「貿易風にさらされて」「少年の木造ランプ」、そしてこのアルバムに収められている「私のドクター」「COOL(クール)」「魔法がとけた朝」などの京田作品を聴いているとただただうっとりしてしまう。

僕はこの『PANORAMA HOUSE』の再発が小川みきの『マイ・ロスト・ラブ』の復刻と同じくらい嬉しい。

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