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Sunday, June 03, 2007

映画『あしたの私のつくり方』

【6月3日特記】 映画『あしたの私のつくり方』を観てきた。

僕は長らく市川準という監督を見くびってきた。

思えば彼が映画デビューしたあの時代、彼がそうだったようにCM制作などの異業種からの転入組監督が非常にたくさん出た。僕は「映画作りはそんなに甘いもんじゃないぞ」と、まるで自分が映画界に勤めているみたいに(実際はCM制作のほうがよっぽど近い会社に勤めているにもかかわらず)そんな監督たちに反感を抱き、彼らを舐めてかかってきた。

だから僕は、彼にとっての監督第17作である一昨年の『トニー滝谷』まで1本も観ようとは思わなかった。『トニー滝谷』を観たのも村上春樹原作であったからに他ならない。

そして、その『トニー滝谷』ですっかり認識を改めた。だから以後は観ることにした。もっとも去年の『あおげば尊し』は見損ねたのだが・・・。

市川準の巧さはどこにあるか? ──例えば、この映画ではこんなシーン。

寿梨(成海璃子)がアドレスを聞き出してメールを書き送る。充電中の日南子(前田敦子)の携帯が鳴る。ところが学校でずっといじめに遭っている日南子には友だちもいなければメールをもらう当てもない。だから一瞬身構える。すぐに携帯を手に取ろうとはしない。

やがて携帯を取ろうと勉強部屋の席を立つ。カメラは追いかけない。フレームアウト。携帯を手に日南子がフレームイン。複雑な表情で携帯の画面を見つめる日南子。カメラは依然固定。そして切り替わらない。

普通ならもう少し早く次のシーンに変わる。だが切り替わらない。30年前のドラマなら違和感のないリズムだ。しかし、最近のドラマはもっとカット変わりが早い。そこを間を持たせて切り替わらない。編集点がいつもより後ろにずれているのである。

──そういう間の取り方、と言うか、引き延ばし方と言ったほうが良いかもしれないが、それが市川監督の演出の技ではないだろうか?

最近の若い子たちは本当に生きるのが大変みたいだ。僕らの若いころにもいじめはあったが、少しく性質を異にしていたように思う。そして、その少しの性質の違いが致命的に今の若い子たちに閉塞感を与えているようだ。大変だ。

この物語は、そんな時代を生き抜くために、そんな環境でいじめられる立場に陥るのを避けるために、自分を偽って、何かを演じて、窮屈に生き抜いている主人公・寿梨と、ひょんなことからうまくやりそこなっていじめられる立場に転落してしまった日南子を描いている。

そして、この2人がそれぞれ、自分に別れを告げ、自分から離脱し、そしてもう一度自分と出会い、自分と再融合する。ある意味で僕も何十年か前に通った道だ。それがあるから現在の確乎たる自分があると言える。

その過程が実に見事に、しっとりと、そして好感が持てる形で描かれて行く。映画の中の台詞にあるのと同じく、この映画も基本的にハッピーエンドの映画なので安心して観て良い。ただし、それはハッピー一辺倒のエンドではない。アンハッピーが重なってハッピーが見えてくるエンドなのである。

若い子たちに是非見てほしい映画だ。

そして、1948年生まれという年齢でこういう映画を撮ろうと思い立ち、そして実際に撮ってのける市川準という監督も本当にすごいと思う。団塊の世代ですよ。サラリーマンの人たちは、あなたの会社で今年定年になる人のことを思い浮かべてみてください。そんな年齢の人がこんな若い子たちのための映画を撮るんです。

この映画、ポスターも成海璃子のワンショットだし、ともかく成海璃子が前面に押し出されているが、僕は実は共演の前田敦子の映画であったと思う。AKB48 のメンバーなんだってね。

この先彼女が大スターになりそうな気はあんまりしない(カリスマ性という意味では成海璃子にかなり引けを取る)けれど、ことこの映画に関しては彼女は目を瞠る出来だと思う。

そして、彼女の母親役で出ていたのが、僕が贔屓にしている奥貫薫だ。彼女も良かった。そして教師役には『パッチギ!』の高浦蒼甫。彼も良かった。

バツの悪さと暖かさ──人間関係がとてもよく描かれた映画だった。そして何よりもこのオプティミズムが勇気をくれた。じんわりと。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

アロハ坊主の日がな一日
やっぱり邦画好き
ラムの大通り
カノンな日々
APRIL FOOLS

【余談】 なんでまた goo で検索するんだろ?と不思議に思ったら、NTTレゾナントが協賛してました。

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