『鴨川ホルモー』万城目学(書評)
【5月28日特記】 よくぞまあ、こんな話を考えついたもんだ、というのが読後第一の感想である。民話や伝承を焼き直したものではなく、多分著者の完全オリジナルなんでしょう? でなければ、あまりに変な話すぎる。こんな変な話はとても一般には共有されないでしょ?
京都に伝わるホルモーという競技にいつの間にか組み入れられてしまった京都大学の学生の話。どんな競技かと言えば、参加者ひとりにつき100匹の「鬼」(と文中では言っているが、「式神」のほうがイメージは掴みやすい)を操って戦わせる団体戦である。
とは言っても、この「鬼」は一般人には見えないことになっており、その見えないものがどうやって見えるようになるかの過程からこの小説は書き始められていて、そこに恋やら友情やらが絡んで青春小説の様相を呈している。
人物の描き方が非常に類型的になっており、その結果全員が人工的な、(もう少し解りやすく言えば)漫画的なキャラになってしまっているという恨みはあるが、読んでいて全く飽きさせないし、話はなかなか良い感じで収束していて非常に好感が持てる。
人物の言動については先が読めてしまう面もあるのだが、ホルモーという競技については全く予想のしようがなく、荒唐無稽な設定をユーモラスに展開して行く筆致がなかなか素晴らしい。
この妙チクリンな競技を一から考えるのは大変だったろうなあ、いや、楽しかったんだろうか? どっちにしても、ホルモーの成り立ちや歴史、隠れた意味合いなど、しっかり設定を立ててから描き始めないと、こういう風にちゃんと辻褄の合ったストーリーにはならなかっただろう。そういうところに僕は敬意を表するのである。
読んでいてイメージが浮かんでくる小説なので、CGだらけになってしまうのは確実だが、誰か手だれの監督に是非とも映画化してほしい作品である。
ところで京大の総合人間学部っていつできたの? ちっとも知らなかった。
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