映画『パッチギ! LOVE & PEACE』
【5月22日特記】 映画『パッチギ! LOVE & PEACE』を観てきた。
年始にこのブログに書いている、キネ旬ベストテン予想を兼ねた僕自身の鑑賞映画総括記事の中で、僕は前作『パッチギ!』を選ばなかった。そしたらいきなりキネ旬の1位に選ばれて大いに驚いた。まあ、22~23位ってとこかな、と思っていたのである。
「どうしてそんなに低い評価をしたのか?」と問う人もいるかもしれないが、僕は低い評価をしたつもりはない。年間制作される邦画の数を考えると、22~23位というのはかなり高い評価ではないだろうか?
それと、単なるイメージ論なのだけれど、井筒和幸という監督に第1位というのは似合わない。7~8位あたりから20位台の前半くらいが一番座りが良いのではないだろうか。
そういう訳で、という訳でもないが、僕は来年の年始もまたこの『パッチギ! LOVE & PEACE』を20~30位くらいのところに位置づけるんじゃないかなという気がする。
で、いつものことなのだが前作を観たにもかかわらず、2年経つとろくに憶えていないのである。主演の2人を別とすれば誰が出ていたのかもほとんど記憶にない。
ただ、今回沢尻エリカが出てないのはちょっとキツイかなというのが事前の予想だったのだが、これは見事に裏切られた。
井筒和幸という監督はともかく役者の個性を活かし、魅力を引き出す監督だ。その監督に鍛えられたのだろう、主役の2人がすごく良い。
アンソン役の井坂俊哉はNHKの朝の連ドラ『純情きらり』で宮﨑あおいに片思いする幼なじみ役で出ていて、僕は当時から好感を抱いていたのだが、その妹キョンジャ役の中村ゆりは経歴らしい経歴もない。が、気が強く自立心旺盛な女性の役を非常に巧く演じていた。そして、女優たるもの巧いだけではどうしようもなくて、それに加えて魅力的でなければならないのだが、その点でも合格だろう。将来有望だと思う。(宮崎あおい)
井筒監督と一緒に脚本をものしたのは「今をときめく」という感じのある羽原大介である。僕としてはもっとひねった作品のほうが好きなのだが、良く言えば、非常に素直な本を書く人である。
前作ほど"在日"をテーマにした感じはなく、後半は少し散漫な感じさえする。やっぱり殴り合いになって、パッチギかましてそれで終わりかよ、という感じがないでもない。
今回は在日という難しい問題を扱いながら、必ずしもテーマはそこに収束しておらず、すべての人間に共通な、スカッとする生き方みたいなものを描いているような気がする。いや、そう思わないとこの映画は安心して見られない部分があるように思う。
とても微妙な問題に絡みながら、台本がスパッと一直線に切り過ぎている感じがあるので、逆に「いや、日本人とか朝鮮人とかいう問題じゃないよ」と唱えてからでないと観られないのである。そして、こういう微妙で難しいタームをそういう風に扱ってしまうと途端にそらぞらしくなってしまうものだが、そこを構わず映画化してくるところが井筒和幸のケレン味のないところである──と、ここは褒めておくべきところなんだろうと思う。
まあ、前作についても書いたことなのだけれど、割とベタな映画ではあるのだが、今回は前作よりスピード感に富んでおり、観客の気をそらすことなくラストまで一気に持って行く感がある。
基本的にエンタテインメントではあるのだが、佐藤栄作がノーベル賞を受賞したことや、昨今平気で戦意高揚の映画を撮る映画人がいることなどに対する反発をしっかりと作品に織り込んであって、その織り込み方がベタなところも、これまた井筒映画の魅力ではないかと思った。
やっぱり20位級の良品だと思う。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。


Comments
こんばんは。
本作については、かなり好意的な感想を書いたのですが、
言われてみると確かに、私も作者の意図を忖度しながら見ていたような気もします。無意識のうちに、井筒氏の弁護に回っている自分がいた、というか(笑)。
ともあれ、時を同じうして公開された「戦争映画」と比較する観点からも、面白く鑑賞できた作品でした。
Posted by: 狗山椀太郎 | Saturday, May 26, 2007 at 01:26
> 狗山さん
どうも。そうですか、あの「戦争映画」もご覧になりましたか。僕は見る気ないです。もちろん見てもいないものを批判する気はありませんが、見て確かめる気もありません。接点を持ちたくないというのが正直なところですね。
Posted by: yama_eigh | Saturday, May 26, 2007 at 10:02