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Saturday, May 12, 2007

DVDボックス『HIT SONG MAKERS 栄光のJ-POP伝説』

【5月12日特記】 DVDボックス『HIT SONG MAKERS 栄光のJ-POP伝説』をやっと全巻見終わった。買ったという記事を書いたのが去年の9月だから、たかだか5枚のDVDを観るのに半年以上かかってしまったことになる。

でも、確かにこれ一気には見られない。大著であり感慨が深いので1本観たら次に手を出すまで少し休息、というか熟成する必要があるんだよね──などと一応言い訳。

構成は以下の通りである。

Disc1:宮川泰 編
Disc2:すぎやまこういち 編
Disc3:筒美京平 編
Disc4:鈴木邦彦 編
Disc5:村井邦彦 編

CX『ザ・ヒットパレード 芸能界を変えた男・渡辺晋物語』を見た時もそうだったのだが、こういう番組を見ているとつくづく思うのは、時代の巨人たちは早くから(つまり売れる前から、巨人になってしまう前から)どこかで繋がっているということだ。

後に渡辺プロという巨大芸能プロを作った渡辺晋がリーダーでベーシストを務めていたバンド"シックス・ジョーズ"の初代ピアニストが中村八大で、八大が抜けた後に入ったのが宮川泰だった。

渡辺晋がフジテレビと『ザ・ヒットパレード』を始めた時のディレクターがすぎやまこういちで、すぎやまこういちの幼馴染で、渡辺プロに出入りするようになったのが青島幸雄だった。

すぎやまがテレビ局の社員でありながら番組のテーマ曲をてがけ、やがてプロに転じて行ったのに対して、レコード会社の社員から作曲家に転じたのが筒美京平だった。彼はその頃からすぎやまこういちのところに出入りしてアレンジの教えを請うたりしていたようだ。

青学の筒美に対して慶応のピアニストとして名前が売れていたのが鈴木邦彦で、卒業後も2人ともプロのステージで欠員が出ると急遽呼ばれて演奏したりしており、お互いに名前は知っていたようだ。

その鈴木は高校時代に中村八大の家に押しかけて教えを請うた経験があり、慶應義塾大学在学中にスマイリー小原とスカイライナーズのメンバーとなる。年配の方には説明するまでもないが、スマイリー小原はCX『ザ・ヒットパレード』で一躍名が売れた指揮者である。その後に鈴木邦彦は中村八大と再会し、以来しっかりとした師弟関係を結ぶことになる。

どうだろう? 見事にみんなが早い時期から繋がっているではないか?
才能は才能を呼ぶということなんだろうか?
それとも単なる先行者利得なのだろうか?

当たり前だけれど、僕は誰とも繋がっていない訳で、「だからダメなのかな」という気がしてくる。

最後の村井邦彦だけはやや繋がりが薄くて、慶應大学ライト・ミュージック・ソサエティ・オーケストラで鈴木邦彦の後輩に当たるというくらいだろうか? でも、卒業してすぐにレコード店の経営をしながら、やはりミュージシャンとしていろんな録音現場などに顔を出していたらしい。だからすぎやまこういちなんかとも古くからの顔なじみである。

彼はテンプターズのヒット曲を書いたことから、敵陣ナベプロに目をつけられ、引き抜かれるような感じで後期タイガースの曲作りを任されるようになったようだ。

彼の場合は先人との結びつきよりも、赤い鳥にプロになるように説得したり、ガロに楽曲を提供したり、ユーミンを見出したり、アルファ・ミュージックを設立したり、細野晴臣と親交を結びYMOを世に送り出したりと、下の世代との結びつきが強く、また下の世代から熱烈に愛されているようだ。

ともかくこういうDVDを見ると、はっと思うこと、新しい面、意外性など次々に認識することになりとても刺激的だ。

今日見た村井邦彦編で言えば、僕はヤマハの人という印象を強く持っていたのだが、作品を並べてみるとそれ以前からのヒット曲も多く、やっぱりアルファ・ミュージックの経営者として大変尊敬されているのがよく解った。

鈴木邦彦という作家は何とも言えないベタな作風だと思っていたのだが、彼が「どうだ参ったか!」と作った渾身の作品がどれも受けず、「もっと解りやすいものを」と言われて受け入れたところからヒットが出るようになったとか、突っ張ってるゴールデン・カップスに「悪いけど1回辛抱してこういうのも演ってくれ」と頼み込んだのが『長い髪の少女』だったとか、そういう話は僕の認識をかなり覆してくれた。

あと、筒美京平が吉田拓郎や宇多田ヒカルをものすごく評価していたりとか、そういう話も面白かった。

ああ、何年に1回くらいになるかは判らないが、死ぬまでにもう何回かずつこのDVDを見るだろうなあと思う。そして、まだDVD化していない続編が出たら必ず買うと思う。

凄い番組だ。そして、これを作ったイーストというプロダクションはやはり優秀な集団だと痛感した。

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