映画『神童』
【4月22日特記】 映画『神童』を観てきた。萩生田宏治監督である。
前作の『帰郷』が素晴らしかったので、この映画も是非とも観ようと思った。『帰郷』は西島秀俊と片岡礼子が主演の、まさにあの年代の男女が主人公の映画だった。今回の『神童』では西島が主人公"うた"の亡父を演じていることからも判るように、ターゲットが1世代若返っている。
原作はさそうあきらによる漫画。「言葉を喋る前に楽譜を読んでピアノを弾いた」と言われる神童=うた(成海璃子)と、一浪して音大を目指している青果店の息子=ワオ(松山ケンイチ)が主人公である。
漫画の場合は音を出すことができないので、それをどう描くかがポイントになってくる。映画にすると音は復活する。逆に復活してしまうことによって描き方が困難になるケースもあるだろう。原作の漫画のことは全然知らないが、映画のほうはうまく処理していたと思う。
この映画は演奏シーンを除いてはカメラはそんなに派手には動き回らない。ただ、カット割りはすごく綿密でである。そして観ていてすごく思ったのは、その一つひとつのカットが長いということだ。TV的な演出に慣れていると特にそう感じる。
所謂長廻しではない。カメラを廻しっぱなしにして俳優に長い台詞を言わせたり人物やカメラが長い距離を移動したりする訳ではないのだ。ただ俳優の表情を、動きを、肝心なシーンの前後を含めてゆったりと見せてくれる。
かたや神童と言われるピアニストの少女、こなた近所からは騒音扱いされる音大受験生。天地の実力差がある2人がひょんなことから出会って、不思議なことに魅かれ合う。そして、音大受験本番の日、ワオはうたが乗り移ったかような奇跡的な演奏をして、なんと首席で合格してしまう・・・。
さて、その後なのだが、この映画はどちらへ進むのか?
クラシック音楽映画なのか、天才の鬼気を描くのか、青春恋愛っぽい世界なのか、観客の紅涙を絞る難病ものなのか──その辺りがあまりはっきり見えない。いや、正確に言えば、そんな特定の要素に転げ落ちることなく、映画は進み、映画は終わる。
非常に示唆に富んでいる。そして、細かいところにまで神経の行き届いた映画だった。
成海璃子、松山ケンイチの主役2人がとっても良いし、教授役の串田和美を筆頭に脇役陣がみんな良い。
この映画、そんなに面白くはないけど、とても良い映画だよ──変な褒め方だけど、僕はそう思った。そういう言い方でみんなに薦めたい映画である。
出てくるピアノが全部 YAMAHA なのはちょっと興醒めだけどね。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。
Comments
TB&紹介ありがとうございます!かなり気に入った映画だけにうれしいです!細かく行き届いた映画、観てて落ち着きますわ☆
Posted by: てれすどん2号 | Thursday, April 26, 2007 00:51