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Saturday, April 14, 2007

映画『東京タワー』

【4月14日特記】 映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』を観てきた。

原作は読んだ。原作自体はそれほどそそられる題材でもなかったのだが、映画化に参加した3人の名前に魅かれたのである。

  • 監督:松岡錠司
  • 脚本:松尾スズキ
  • 主演:オダギリジョー

映画化されると間違いなく原作より良くなる点がある。それはリリー・フランキーの悪文(本当は「文」という字を用いることさえ憚られる)と縁が切れるということだ。それがはっきりしているから、安心して見に行くことができた。

松岡錠司という人はあまりケレン味のない監督である。目立ったパフォーマンスもなく、どちらかと言えば役者の芝居をしっかり撮る人である。この映画においても基本的には同じである。

だから、ぼうっと見ているとどこが巧いのか凄いのかを見逃してしまいがちなのだが、よく注意して見てるといろんなところがしっかり効いている感じがある。まあ、細かくは書かないけど、例えば繋ぐ手であったり、足の裏であったりする訳だ。

ただ、やっぱり何か仕掛けがあってドーンという感じはない。今回唯一の飛び道具は内田也哉子が樹木希林の若い頃を演じたということかな。

あとセットは凄かったね。初めのほうの九州の炭鉱町。見ていて「おお、立派なもん建てたね」と口に出そうになったくらい。

監督に比べて、脚本の松尾スズキのほうはしっかり自己主張していた。

独自の設定やエピソードを加え、原作から誰もが拾ってくるだろうと思うエピソードを拾わず、そういうエピソードを拾ってくる時にも謂わばフルコーラス採らずにサビで留めるみたいな感じ。

そして、布石を打っては後で繋げるということの繰り返し。例えば、少年時代に助けた兎が後のペットに繋がり、オカンに手を引かれて歩いた線路がオカンの手を引いて渡る甲州街道に繋がる。点を線にし、線を面にする脚本である。

そして、「観客を泣かすだけ泣かせて金を取るぞ」みたいなスタンスが全く感じられないところが何よりも素晴しいなあと思いながら観ていたのだが、その辺の所を監督自らがパンフで語っているのを読んで嬉しくなった。

無理して日本全国の皆さんを泣かせるために四苦八苦して本当に疲れて、いったい何のために「東京タワー」を映画化したのって、そんな風になるんだったらやめて下さいってことなんだよ。俺はそう解釈したの。(中略)

何も考えずに泣きたいとか、表層的なレベルで浄化されるだけでも映画って役に立ってんじゃんってのは確かにあると思うよ。だけど『東京タワー』はそういう映画じゃない。

(パンフレット29頁、松岡監督のインタビューから引用)

にも拘わらず、オカンが死ぬところになると劇場内はすすり泣きの嵐である。びっくりした。僕も最近映画を見て泣くことが増えてきたが、僕の涙腺はこの手のものには全く反応しない。

考えてみれば、この映画は多分原作を読んで結構感動しまくった人たちが寄り集まって作っているはずだ。なのによくもこんなに良心的な映画ができたもんだ、日本もまんざら捨てたもんじゃないなあと、ちょっと変なことを思ってしまった。

監督と息ぴったりの笠松則通のカメラも美しかった。シネスコで横に広いことばかりが取り上げられているが、僕には画の奥行きが印象的だった。そして、役者一人ひとりが本当に良かった。これこそが松岡カラーなんだと思う。

樹木希林、小林薫、勝地涼、渡辺美佐子、荒川良々、寺島進・・・。枚挙に暇がない。もちろんオダギリは言うまでもなく、内田也哉子も良い味を出していた。

また、チョイ役で凄い人が次々出てくるのにはびっくり──小泉今日子、板尾創路、宮﨑あおい、田口トモロヲ、松田美由紀、柄本明、光石研、仲村トオル・・・。(宮崎あおい)

「映画なんか滅多に見ない」という人に特に見てもらいたい、なんかそんな感じの映画だった。

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