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Sunday, March 18, 2007

映画『ドリームガールズ』

【3月18日特記】 映画『ドリームガールズ』を観てきた。びっくりした。やっぱり餅は餅屋である。

実を言えば映画を観るという意識は極力持たないようにして、ただ音楽を聴くつもりで劇場に足を運んだ。

なぜならミュージカルも含めて、音楽をフィーチャーした映画や舞台にはしばしばがっかりさせられることがあるからである。がっかりするくらいならましなほうで、ひどい時にはげっそりして帰ってくることになる。

優れた歌にはそれだけで観客を感動させる力がある。なのに、その感動を倍加させるために持ってきたのがヘッポコなストーリーだったりすると、全体としては音楽の感動にマイナスの数字を掛けることになってしまうのである。

歌や踊りの巧拙はさまざまだが、それを乗せて運ぶストーリーが「何、それで終わり?」みたいなしょーむないことが非常に多いと僕は思っている。

なぜ往々にしてストーリーは興ざめとなるか? それは歌や踊りがリアリズムに反するからである。いくら感極まったからって、日常生活の中で突然歌いだしたり踊りだしたりする奴はいない。にもかかわらず、それをやってしまうのがミュージカルだ。而してそこに、あまりに写実的な芝居を組み合わせようとすると、この2つは離反することとなるのである。

そういう意味でこの映画の題材はとても良かった──舞台はエンタテインメントの世界である。夢と現実が混交する世界である。show biz である。虚構のショーである一方で冷酷なビジネスの世界である。冷徹な分析と派手な虚飾の両方を必要とする世界である。映画の舞台となっている場所自体がボーダー上の世界なのである。

だからこそ観客は出演者たちの歌による台詞にすんなりと入って行けるのである。

こういう世界はやはりアメリカが本場である。いかにも本場のアメリカが作ったという感じの素晴らしい出来だった。ブロードウェイのヒット・ミュージカルであるだけに設定は充分練り込まれており、人物像にリアリティがある。エンディングのスタッフ・ロールはまるでカーテンコールのようであった。

成功の主たる要素はやっぱり歌だろう。ビヨンセとジェニファー・ハドソンばかりがやたらと注目を浴びているが(それに異を唱えようという気はまるでないが)、僕の目に留まったのはジェニファー・ハドソンの兄役をしているキース・ロビンソンだった。

作曲家の役で、この映画の中では歌ったりしないのかと思っていたら、突然歌で妹に語りかけてきて、「おっ、兄ちゃん、ええ声してるやんけ」と驚いた。聞けばデビューは『パワーレンジャー』のグリーンレンジャー役だとか。
うむ、なかなか“ドリームボーイ”な経歴の持ち主である。

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製作年度:2006年上映時間:130分監督:ビル・コンドン出演:ジェイミー・フォックス 、ビヨンセ・ノウルズ 、エディ・マーフィ 、ジェニファー・ハドソン 、アニカ・ノニ・ローズ 、ダニー・グローヴァーオススメ度:★★★★☆ストーリー:1962年、アメリカの自動車産業の中心地、デトロイト。エフィー、ローレル、ディーナの3人は音楽での成功を夢見て“ドリーメッツ”というグループを結成し、新人オーディションへの挑戦を繰り返していた。中古車販売会社のカーティスはそんな彼女たちに大きな可能性を見出...... [Read More]

Tracked on Wednesday, March 21, 2007 at 14:45

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