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Saturday, March 10, 2007

映画『リトル・ミス・サンシャイン』

【3月10日特記】 映画『リトル・ミス・サンシャイン』を観てきた。

今週は漸く関西でも『松ヶ根乱射事件』と『マニアの受難』が始まり、他にも『さくらん』とか『ドリームガールズ』とか、観たい映画がいっぱいあったのだが、この映画も金曜日までで終わってしまうので、まずこの映画から。

キーワードは「負け組家族」である。Poor White の一家。

父親のリチャード(グレッグ・キニア)は仕事がうまく行ってない。自ら考案した“9ステップ・プロジェクト”なる「勝ち組になる心構え」を説くコンサルまがいのことをやっているのだが客が来ない。この理論を出版して一攫千金を狙っているのだが世の中そう甘くはない。

妻のシェリル(トニ・コレット)は、そんな不甲斐ない夫に罵声を浴びせてばかり。おまけに、自殺未遂をした兄・フランク(スティーヴ・カレル)を引き取ることに。彼はプルーストの研究者でゲイなのだが、賞と恋人の両方をライバル研究者に奪われてしまって失意のどん底にある。

フランクを引き取ったものの、独りにする訳に行かないのでシェリルは彼を息子のドゥウェイン(ポール・ダノ)と同室にする。ところがドゥウェインは一言も喋らない。ニーチェに対する憧れと、航空学校合格の願掛けと、そして家族に対する嫌悪感からもう何か月も無言を貫いているのである。

家族の唯一の救い的な存在が娘のオリーヴである。彼女は美少女コンテスト“リトル・ミス・サンシャイン”出場を目指しているお茶目な7歳。

そのオリーヴにダンス指南をしているのが、リチャードの父、オリーヴにとってはグランパ(アラン・アーキン)である。これがまたいい年をしてヘロイン中毒で色情狂の文句ばっかり言ってるとんでもない不良爺である。

で、予選で2位だったオリーヴが“リトル・ミス・サンシャイン”に繰り上げ出場することになり、飛行機代が払えない一家はボロボロのミニバスを運転してアルバカーキからカリフォルニアまで陸路を行くことになる。映画は俄かにロード・ムービーに転ずるのである。

非常に皮肉の利いた設定(親父は勝ち組に残る理論を説きながら、自らは負け組以外の何者でもない)、それぞれにアクセントの利いたエピソード、そして見事な結末──と語るべき点はたくさんあるのだけれど、この映画の飛びぬけて素晴らしいところは2つあると思う。

ひとつは画の良さ。

何度も出てくる、あのおんぼろバスに飛び乗るシーンの美しさ。ファミレスみたいな店でテーブルを囲む家族の滑稽さ。なす術なく見下ろす家族の視点から切り取った、拗ねてへたりこむドゥウェインの姿。慰めに行ったオリーヴとドゥウェインを今度は逆の角度から、残りの家族を背景に収めた構図、・・・。他にもたくさん良い画があった。

そして、もうひとつは、圧倒的な台詞の良さ。

他の少女たちの演技を見て臆してしまったリチャードが妻に向って「オリーヴにこれ以上演技させるのはやめよう」と言い出した時にシェリルが言ったことば──Olive is who she is !

凄いよね、これ。何と訳す? 難しいよね(字幕がどう出ていたのか忘れてしまった)。学校英語なら who ではなくて what になるはずだが、要するに「オリーヴはオリーヴで精一杯やってるのよ!」みたいな感じなのだが、もっと鋭さがある。彼女は彼女よ、他人がどうあれ関係ない、みたいなニュアンス。個人主義の総本山・アメリカ合衆国ならではの台詞だと思うなあ。

あと、絶望したドゥウェインが「もう18歳まで何もしたくない」と言ったときに、フランクが「辛い思いを一杯しておいたほうが人生が豊かになる」と言った後で述べた台詞──Highschool is your prime suffering  time.

これも良いよね。不良爺もたくさんの名言を吐いていたし、とにかくひとつひとつの言葉づかいに冴えがあるんだよね。

ラストのコンテストのシーンで観客みんながクスクス笑っているときに、僕は一人で大泣きしてしまった。

人間の価値って、どれだけ負けを知っているか/どのような負けを知っているか(どれだけ負けたか/何度負けたかではない)で決まる要素も大きいと思った。

古い映画だが『スラップ・ショット』を思い出してしまった。

いずれにしても、もうそろそろ勝ち組/負け組なんて分類はやめませんか?

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

アロハ坊主の日がな一日

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Comments

ご無沙汰しております。
[ ユメ十夜 ]に引き続きTBあんがとさんでした。
家族再生の王道のような映画でしたが、
ラストは、ちゃんと感動できるというのは
完成されていますね。お見事でした。

[ ユメ十夜 ]は、ニフティとの相性が悪いようで
TB返しがなかなかできませんので、折を見て・・・。

Posted by: アロハ坊主 | Sunday, March 11, 2007 at 00:09

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