映画『パフューム』
【3月21日特記】 映画『パフューム』を観てきた。
パトリック・ジュースキントの原作『香水』はかなり昔に読んでいる。そもそもは妻が独身時代に読み、結婚してから妻に薦められて僕も読んだ。妻が持っていたのは「1988年12月15日第1刷」である。僕が読んだのは多分90年代の後半ではないかと思う。欧州のベストセラーではあるが、日本人でこういう夫婦も珍しいのではないだろうか。
で、例によって、面白かったということ以外は何も憶えていない。僕とは対照的に読んだ本や観た映画、食べた料理、行った場所などを詳細に憶えている妻にいろいろ解説してもらったが、当然何も思い出さない。映画を観たら思い出すかと言えば、やっぱりあまり思い出さない。
ただ、小説も映画も抜群に面白かったことだけは確かである。
映画が終わった後で「ド変態の映画やったなあ」と語っている人がいたが、そういう感性の人ってやっぱりいるんだなあと驚いた。ちょっと可哀そうな気がする(映画が、ではなくてそういう人が)。
魚市場の悪臭芬々たるハラワタ捨て場に産み落とされた1人の赤ん坊。彼は何キロも先の匂いを嗅ぎ分ける特殊な能力を持っていた。生まれた瞬間から鼻をヒクヒク動かす描写がとても印象的だった。やがて彼は孤児院に引き取られジャン=バティスト・グルヌイユと名づけられた。
小さい頃からその特殊な能力ゆえに敬遠され友だちもなく、ひとり様々な匂いを嗅ぎ分けて恍惚としていた。そして13歳の時に皮なめし職人に売り飛ばされ、数年後親方についてパリに出かけた際に、彼にとっては運命的な、理想的な体臭の持ち主である女性に巡り会い、誤って殺してしまう。その後パリの調香師バルディーニに弟子入りして技術を身に着け、いよいよ彼のライフワークとなる理想的な女性の体臭の保存に取り掛かる──という話だ。
匂いは映像で伝えられるものではないのに、それが見事に伝わってくる映画だ。しかも、寡黙な主人公の頭の中で「匂う!匂うぞ!匂ってくる!匂う!匂う!」と鳴り響いているのが聞こえてくるが如き、鬼気迫る感がある。
後から知ったのであるが監督のトム・ティクヴァと撮影のフランク・グリーベはあの『ラン・ローラ・ラン』のコンビである。脚本のベルント・アイヒンガー(この人はプロデューサでもある)とアンドリュー・バーキンの2人は『薔薇の名前』のコンビである。なんという大胆な組み合わせ! そして映画を観たら大いに納得してしまう。
妻はこの本を読んだときに最後の部分がよく解らなくてもう一度読み返したけどやっぱりよく理解できなかったと言っていた。すべてを解明しようとする彼女らしい態度だ。この映画もやっぱりよく解らない映画ではあるが、凄い映画である。
魚の死骸、動く鼻孔、産毛、女性死体の肋骨、香水の調合に使う道具、何キロもの距離を経ておそらく主人公の鼻だけににおいが流れてきていると思われる遠景、死刑執行の広場に集まる群衆、おっとこれから先は書けないが、ともかく強烈に五官に働きかけてくる。
匂いの持つ魔力、才能を持てる者の苦悩と狂気、人間の動物的な本能・・・。
そう、この映画は人間の非常に原初的な部位に直接的に働きかけてくる。このような刺激は決して他の映画からは得られないだろう。筆舌に尽くしがたいので、是非ご覧あれ。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。


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