『くりいむレモン』
【3月4日特記】 昨日の深夜に WOWOW から録画した『くりいむレモン』を観た。2004年度キネマ旬報で堂々第46位にランクされた映画である。
今までアニメやらVシネマやらで何度も映像化されているのでご存知かもしれないが、血の繋がりのない兄と妹の恋愛を描いた作品だ。
兄役は水橋研二。水橋研二と言えば忘れられないのが塩田明彦監督の『月光の囁き』で彼が演じた苦悩のフェティシスト。あの映画での苦悩に似た世界を、また彼が卓越した演技力でここに再現している。
妹役は村石千春。この人が何者なのか僕は知らない。
小さい頃に両親が再婚して兄妹となった二人だが、いつしか互いに魅かれ合うようになって、ずっと自分の気持ちを抑えつけてきたが、堰が切れると一挙に激流に洗われることになった。即ち、嵐のようなセックス。何度も何度も。
法律の上では何の問題もないはずなのだが、本人たちにも負い目があるし、周囲もそれを知ったら黙って祝福してはくれない。
親にばれて車で逃げ出してからは、本当に重くて暗くて単調なシーンが続く。そして、突然ブチっと映画は終わる。
そこにあるのは寂寞──。
いやあ、こういうの撮らせると山下敦弘監督の本領が見えますね。本当に巧い!
ほとんど裸を見せずに(村石千春はおっぱいさえ映らない)これだけ激しい肉体の結合を描けるのは大したもの。
でも、逆にこういう題材であるからこそ、徹底的に映さないのはちと不自然な気もする。
ま、いずれにしても、本来アブノーマルでも何でもないのに単にアブノーマルとしか見られない真摯な恋の姿を見て、僕らは社会という桎梏の中で果てない寂寞に溺れて行くような気がしてくるのである。
だらだらとした展開の後でこういう余韻を残せるところが、山下敦弘ならではの技量である。
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