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Saturday, February 03, 2007

映画『魂萌え!』

【2月3日特記】 映画『魂萌え!』を観てきた。

阪本順治監督について言えば、デビュー作の『どついたるねん』、3作目の『王手』の頃は随分好きな監督だったのだが、その後メジャー感が増してくるにつれてあまり僕が見たくなるような映画を撮ってくれなくなった。だから、それ以降で観たのは『顔』と『KT』だけである。

原作の桐野夏生について言えば、大変しっかりした筆力の持ち主だとは思うが、最初に読んだのが『OUT』で、あの内容にげっそりしてそれ以降は読んでない。

では、何が引き鉄になってこの映画を観たかと言えば、それは風吹ジュンである。好きな女優なのである。

僕らの年齢なら風吹ジュンはデビュー当初のアイドル時代から知っている。だが、僕はその当時からのファンではない。中年に差し掛かって渋い脇役をこなすようになってからである。主演作ではやっぱり『コキーユ 貝殻』(中原俊監督、99年)だろう。

長年連れ添った夫(寺尾聡)が定年の3年後に突然死んでしまう。残されたのが59歳の妻・敏子(風吹ジュン)と娘の美保(常盤貴子)。そして、アメリカに行ったきり帰ってこない彰之という息子(田中哲司)がいる。

葬儀の夜、夫の携帯に伊藤という女から電話が入る。夫に女がいたのだ。彼女にとっては思いもかけないことだった。やがて彼女は意を決してその女を呼び出す。若い女かと思っていたら、自分と同年代、いや、多分自分より少し年上の女・昭子(三田佳子)が現れる。

──それが物語の発端なのだが、この一連のシーンが怖いの何の!

電話を掛けている風吹ジュン。途中でカットが切り替わって仰角の画になった時の鬼気迫る表情。寺尾の家の前に停めた車の中で最初の口上をブツブツ予行演習する三田佳子(この時点ではまだ顔は見えない)。チャイムが鳴ってドアを開けたらアップで目に飛び込んでくる三田の白髪。

上がり込む三田。靴を脱いで黒のストッキング越しに見える赤いペディキュア。このシーンは2つのシーンと対比されていて、1つはその直前の、チャイムがなる前にルージュも引いていないことに気がつく風吹ジュンのシーン。もうひとつは風吹が病み上がりの三田と再度対決するシーンでの、三田のつっかけを履いたはだしの足(もちろんペディキュアはつけていない)。

その後の家の中での動き。間口に見える指だけ。座布団をどける三田。お茶を入れる風吹(背中だけ)。2人の会話はワン・ショットずつの切り替え──何とも言えない、見事にデザインしつくされたカメラワークである。

で、ずっとこのストーリーを芯にして進むのかと思ったら、意外に雑多なエピソードが入り乱れていて、中盤からちょっとダレてくる。終盤の三田との再対決のシーンや、電車の中で吐き気を催す風吹のシーンなどで少し緊張感を取り戻すが、うーん、ちょっとまとめ方に難ありという感じ。

個々のシーンには非常に冴えがあるのだが、全体としてはやや緩い。脚本の責任でしょうね。

最後のシーンにしても時間的に飛躍しすぎてて、あれを見てすんなり観客が勇気づけられるかと言えば、やや空々しい感じのほうが残るような気がする。

この内容を実感するには僕の年齢が少し足りないのだろうか? でも、僕にして年齢が足りないのであれば、この映画はあまりにターゲットが狭すぎる。それはとりもなおさず商業映画としては失敗ということにならないだろうか?

ところで、僕のお目当ての風吹ジュンはと言えば、三田佳子と加藤治子(カプセルホテルで会った老婆)という2人の怪優とも言うべき存在に挟まれて、やや存在感が薄れてしまった。この2人が上手すぎることもあるのだが、普段の風吹に比して、いつもより全体的にのっぺりした演技で終わってしまった気がする。

子供たちに対するストレスがもっとはっきり描けていればなあという気がするのである。少し残念。でも、まあまあ良い作品ではあった。

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Comments

ご無沙汰しています。ホームページはいつも楽しく拝見させていただいております。原作の「桐野夏夫」は「桐野夏生」ですね。慎重な方にしては珍しいなと思い、細かい突っ込みいれました。すみません。

Posted by: いぜんお世話になったM | Monday, February 05, 2007 13:34

> いぜんお世話になったMさん

ご指摘ありがとうございました。訂正しました。

が、「いぜんお世話になったM」って誰やろか?と随分考えてしまいました。どうも最初に若い女性を想像してしまったのが間違いだったようです。多分、僕と同年輩の男性の方ですね? また東京に戻られたとか。(全然的外れだったらごめんなさい)

Posted by: yama_eigh | Monday, February 05, 2007 14:36

同年代の男性です。四国出身です。まだ、東京には帰っていません。
今もしゃちほこを見て暮らしています。
ほぼ、毎日更新されているブログには驚きを隠せません。
頑張ってください。

Posted by: いぜんお世話になったM | Tuesday, February 06, 2007 21:45

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