映画『イエスタディ・ワンス・モア』
【2月26日特記】 映画『イエスタディ・ワンス・モア』を観てきた。ったって、知ってる人ほとんどいないかもしれないが・・・。
大阪・梅田のHEPホールでCO2という映画祭があって、ちょっといきさつと縁があって行ってきたのである。
CO2ったってもちろん二酸化炭素のことではない。シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビション実行委員会というのがあって、最初の3つのパートのアクロニムがCOO、それをCO2と表記しているのである。
で、その中で特にこの作品を見たかったかと言えば別にそうではなくて、単に僕が行けるのはこの時間しかなかったというだけのことである。このイベント自体は今日から3日間のスケジュールで行われている(平日の昼間からやるなよな)。
こういう登竜門的な映画祭を観るのは大変しんどいものである。去年のPFFで特別上映された森田芳光の出世作『ライブイン茅ヶ崎』を観たのだが、これも相当きつかった。今どき高校の映研でももう少し体裁の良い作品を作るだろうと思う。
でも、問題はそんな全体像の中から何か捨てがたい要素を掬い上げられるかどうかなのである。事実『ライブイン茅ヶ崎』にはそれがあった。
僕はいつも思うのだが、映画の作者はその技量とセンスが問われるのに対し、観客は感受性と眼力が試されるのである。
・・・なんてことを事前の心構えとして鑑賞に臨んだのだが、僕の認識は間違っていた。巨匠に入門でもしない限りどう撮れば良いか解らなくて試行錯誤するような時代じゃないんですね。
大阪芸大OBの松野泉監督は何からここまでの技量を身につけたのかは知らないが、もうほとんど完成されているのである。さすがオープン・コンペへの応募作品ではなく、企画制作部門の上映だけのことはある。
画の繋ぎ方が非常によく分かっている。最初のほうの喫茶店のシーンで、カメラが人物を追って左にパンし、もう一度右に戻ってくるのだが、この単純なカメラワークで人物を奥に配したり手前に映したり、左右に動かしたりする間にシーンを切り替えて、そして気がついたら奥にいた人物が消えていたりして、観客をあっと言わせてくれる。
壁や柱などで画面の中にもうひとつフレームを設ける手法が特徴的で、それが功を奏している。時々ものすごい長廻しもあって、カメラが動くとそこに新たな登場人物が出てくる構図も、使いすぎてパタン化してはいるのだが、見ているほうは「また誰か出てくるぞ」とザワザワした気分になる。
ホラーではないのだが、ホラーっぽい感覚で作られており、観客を怖がらせるのは大変上手い。台詞回しも悪くない。俳優の演技も悪くない。
ただひとつだけ難点があって、筋がナンダカヨクワカラナイのである。
かなり演劇的な作品なんですよね。舞台ならこれでも構わないかもしれないけど・・・。
描き過ぎてしまうのではなく多様な解釈を許す形に収めるのは良いことなのだけど、それをあまり広げ過ぎてはいけない。観客は作者が思うより遙かに物ぐさで集中力散漫で鈍いものだ。
特に身内以外の人間がこの手の映画を見る場合、見たことある俳優は一人も出ていないということもあって、最初は誰が誰か(さっき出てきた人物と今映ってる人物が同じなのかどうか)判らないので、筋が却々掴めない。その上こんなに謎を残されては見ているほうはかなりきつい。終盤でちょっと脚本が「壊れた」感じもしたしね。
この映画に「難解だ」とか「奥が深い」とかいう評価を与えてはいけないと僕は思うのですよ。余韻はたっぷりあるんだけど・・・。
なんかもっともっとベタベタな脚本家の作品を撮らせてみたいなあ。
なお、このイベントは3月13~15日のスケジュールで東京でも予定されている。興味のある人は見てみてほしい。そして是非感想を聞きたい気がする。
雰囲気たっぷりの映画なので非常に惜しいと思うのだが・・・。
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Comments
TBありがとうございます。僕は当日スタッフでいたので、ブログで生の感想をいただけると非常にうれしいです。松野監督も喜ぶと思います。イエスタディ・ワンス・モアは企画制作部門の中でも画がとてもつくりこまれていて、撮影の高木さんと松野監督の化学反応には驚きと感動の連続です。また各作品劇場でのレイトショー公開も今後予定されていますので、もし興味があればご覧ください。とくに、スタッフと役者で参加した「放流人間」の感想などもお聞かせ願いたいです。
Posted by: てれすどん2号 | Sunday, March 04, 2007 at 17:58