Listening to The Carpenters, once again
【2月13日特記】 カーペンターズを聴き直してみた。急に聴きたくなって、TSUTAYA に行って借りてくるほうがよっぽど安かったのだがそこまで待てず、結局 mora からダウンロードしてしまった。
実はカーペンターズは嫌いだった。流行っていたし、姉がアルバムを持っていたりしたので、自然に耳には入っていたが、自分から聴こうとはせず寧ろ敬遠していた。
その僕がもう一度聴き直してみる気になったのが年のせいだとすれば、あの頃彼らを嫌っていたのは時代のせいだと言えるのかもしれない。
どれほどロックに入れ込んでいたかは別として、僕らはやっぱりロック世代だった。カーペンターズには、そのロックっぽさがなかった。自分が不良だったかどうかは棚に上げて、ロックには(音楽には、と言い換えても良いが)やっぱり不良っぽいイメージを求めていたのだ。だから、カーペンターズの非ロック的な、あるいは時には反ロック的な要素が許せなかったのである。
女がドラム叩いて男がピアノ弾くって、なんじゃそりゃ!?と軽蔑してた。女が叩いているだけあって(などとひどく封建主義的/差別的なことを平気で思ってた訳だが)、ドラムスは力弱く、くぐもった音で、なんかドタドタした感じだった(それは今聴き直しても同感であるが)。
そして、兄妹バンドであるという、なんとなくの家族的な軟弱さ、マザコンならぬシスコン的な匂い──事実「近親相姦だ」などという悪意に満ちた噂もあった──それが嫌だった。
でも、今聴きなおすと非常に良いのである。メロディの宝庫である。「バート・バカラック譲りの」と形容して良いのだろうが、リチャード・カーペンターの奏でるメロディとハーモニーにはやはり卓越したところがあると認めざるを得ない(もちろん彼らのレパートリーにはバート・バカラックやレオン・ラッセルなど他人の作品も多かったのだが)。
僕は「解りやすく、憶えやすく、歌いやすい」というのがポップスの大事な3要素だと思っているのだが、それらを満たした上で、それらを乱すことなく見事なメロディとハーモニーが載せられているところに感嘆せざるを得ない。
そして、ベスト・アルバムを聴いているとすっかり記憶から消えていた名曲が次々と甦ってきて、ああ、彼らにはこんなにたくさんヒット曲があったのかと驚いてしまう。
上で書いたように年のせいかもしれない。
今僕の中では、そんじょそこらの曲では満足せず思いっきりひねって工夫した曲ばかりを求める渇望感と、単純で解りやすく美しいものを水が沁み込むように吸収する素直さが同居している。
奇跡のような両極端同居である。不思議なものである。
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