映画『ユメ十夜』
【1月28日特記】 映画『ユメ十夜』を観てきた。
この土曜日からのロードショーでは『魂萌え!』、『幸福な食卓』、『どろろ』と、ちょっと観てみたい作品が目白押しだが、とりあえずこの『ユメ十夜』を選んだ。
漱石の『夢十夜』は中学か高校の国語の教科書に載っていた。全話掲載されていたのか一部だけが収録されていたのか、一部だけ載っていたとして後から自分で全話を読んでみたのかみなかったのか、その辺の記憶が曖昧である。
ただ、はっきり記憶に残っているのは「第六夜」である。運慶が仁王像を彫り出す話。これは確かに教科書で読んだ。強烈な印象が残っている。
1月23日の記事に「砂の中から石を掘り出すように文章が書けたら良いなあと思う」と書いたのは実はこの短編を踏まえたものである。
さて、この映画は十話の原作を10組11人の監督の手に委ねたオムニバスである。ネット上には詳しい構成があまり載っていないようなので、ここに掲載しておく。
- 第一夜:実相寺昭雄監督、久世光彦脚本、小泉今日子・松尾スズキほか
- 第二夜:市川崑監督、柳谷治脚本、うじきつよし・中村梅之助
- 第三夜:清水崇監督・脚本、堀部圭亮・香椎由宇ほか
- 第四夜:清水厚監督、猪爪慎一脚本、山本耕史・菅野莉央ほか
- 第五夜:豊島圭介監督・脚本、市川実日子・大倉孝二ほか
- 第六夜:松尾スズキ監督・脚本、阿部サダヲ・TOZAWAほか
- 第七夜:天野喜孝・河原真明共同監督、アニメーション
- 第八夜:山下敦弘監督、長尾謙一郎・山下敦弘共同脚本、藤岡弘・山本浩司ほか
- 第九夜:西川美和監督・脚本、緒川たまき・ピエール瀧ほか
- 第十夜:山口雄大監督、加藤淳也・山口雄大共同脚本、漫☆画太郎脚色、松山ケンイチ・本上まなみほか
以上の前後に、清水厚監督・脚本、戸田恵梨香・藤田宗久出演による、原作にはないプロローグとエピローグがある。
僕が一番印象深かったのは、そういう訳で「第六夜」である。
『恋の門』を観て、松尾スズキという人は映画監督としても非凡なものがあると思ったのだが、dancing 運慶&2ちゃんねらーの見物人とは恐れ入った。
古典を映画化するに当たっては最初に決定しなければならないことがある。
原作通りの時代設定にするのか、思い切って現代に置き換えるか、それとも見た目は明治にしておいてその中に現代の要素を入れ込んで行くのか?
この映画における10組の監督の取り組みは様々である。その10人が10人、驚くような“(新)解釈”を披露してくれている。
そんな中で山下敦弘は、冒頭の部分で、明治でも平成でもなく、どう見ても昭和40~50年代の少年たちを描き出していた。この中途半端が却って山下監督の発想の独創性を感じさせた。
逆に明治をそのまま描いたケースでは、多くの監督がモノクロ、セピアなどの手法によって色数を抑えたりソフト・フォーカスにしたりしていて、人間の考えることって似たり寄ったりなんだなあと思い知らされた。そういうのはあまり面白くない。違っていることが面白いのである。
この映画は、思えばバリエーションを楽しむものだ。統一感を出したいのであれば1人の監督が撮れば良い。
皆が思い思いに原作を変形して撮っている。彼らの自由な想像力には結構圧倒される。そして、皆が好き勝手に撮っていながら、結果としてどれくらいの統一感が出たかな?という楽しみ方もある。
そんな中でアニメーションを1作入れたのは卓越したチョイスだと思った。
11人の監督とそれぞれのスタッフ、そしてそれらをまとめたプロデューサによる、この遊び心溢れる試みに拍手を送りたい。
脳はたっぷり刺激を受けた。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。


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