『strawberry shortcakes』魚喃キリコ(書評)
【12月22日特記】 痛々しい話。
読む人によって、今までにここまで痛々しい思いをしたことがない人だったり、あるいは逆にもっともっと痛々しい思いをしてきた人だったりするだろう。だけど、これはどんな人が読んでもリアルに感じられる痛々しさだ。
それはその痛々しさが激しいか穏やかかということに拠るのではなくて、生きるということに対して本質的な痛みが描かれているからなのではないかと思う。人生に本質的な痛々しさ──。
帯の宣伝文句にある「等身大のガールズストーリー」というのもちょっと違うような気がする。でなければ、僕のような中年男にこれだけの感慨を持たせるはずがない。
漫画については全然詳しくないので、あくまで門外漢の感想と嗤ってもらって良いのだが、真っ黒なスミベタ塗りのコマに浮かび上がる白抜き文字の独り言──たびたび登場するこの常識破りのコマがものすごく印象深い。
描き込んでいるように見えてどこか空疎な空白を残した線描。それでいてコマ全体に余すところなく風景が広がる。空疎が広がる。そこへ突然現れるスミベタ。そして空疎で痛々しい独白。
読んでいて辛い。なのに読み終わってみると泣き明かしたあとのような解放感がある。
実は映画を先に見た。そして原作も読んでみたほうが良いと言われて読み始めたのだが、結果としてあの映画の凄さを再度認識することになった。
この原作を見事に膨らませ、アレンジしている。まだどこかの映画館で上映しているかもしれない。あるいはDVDが発売になってからでも良い。是非映画のほうも見てほしい。原作以上に絶句するはずだ。
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