« 大掃除 | Main | 何年ぶりかの『紅白歌合戦』見聞録 »

Saturday, December 30, 2006

『スクラップ・ヘブン』

【12月30日特記】 WOWOW で録画しておいた『スクラップ・ヘブン』を観た。李相日監督。『フラガール』と同じ監督とは思えない。もちろんこっちのほうがずっと良い。ただし、世間には『フラガール』のほうがずっと良いと言う人もたくさんいるだろう。

バスジャックされた。乗客は3人。

ひとりは刑事(加瀬亮)、と言っても総務課でデスクワークしかしたことがない。いよいよ自分の真価を発揮する絶好のチャンスだが、何もできないうちに犯人はピストル自殺してしまう。

もうひとりはトイレ掃除を生業とする青年(オダギリジョー)。犯人に肩を撃たれて倒れる。

最後のひとりは薬剤師(栗山千明)。右目が義眼。バスの中で狼狽して、その義眼を落としてしまい、犯人の手許までころころ転がる。実は家で爆薬を調合している。

その3人が後にめぐり合う。まず加瀬とオダギリ。2人は復讐代行業を始める。うまく行く。でもそんな「草の根運動」では何も変わらないことに気がついた2人は──。

「想像力の欠如」という言葉をキーワードに、行き場のない閉塞感がじりじりと綴られる。映像も台詞もとてもスリリング。オダギリの父や加瀬の職場など織り込まれているエピソードもよく練りこまれている。屋上から遺灰を撒くシーンは圧倒的な印象があった。

重ねて書くけれど『フラガール』という非常に図式的なストーリーを撮った人の前作とは思えない。得体の知れないものを描こうとしているところが野心的である。

画に力がある。話に余韻がある。そして救われないまま映画は終わる。それが、この映画の力である。図式に嵌らないゴツゴツした、ハラハラさせる映画だった。

|

« 大掃除 | Main | 何年ぶりかの『紅白歌合戦』見聞録 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 『スクラップ・ヘブン』:

« 大掃除 | Main | 何年ぶりかの『紅白歌合戦』見聞録 »