『歓びを歌にのせて』
【12月24日特記】 WOWOW で録画しておいた『歓びを歌にのせて』を観た。2005年のキネ旬では外国映画の115位にランクされているスウェーデン映画である。
ヨーロッパの、それも英仏独伊あたりとは違う国の映画を見ていると、やっぱり文法が違うなと思う。ハリウッドとも日本とも。あるいはヨーロッパの大国とも。
2人の会話を交互に撮る1ショットがくどいなと思うところがあったり、室内のシーンで顔にこれだけ日光が当たってるのも珍しいなと感じたり、ということもあるのだが、それよりもなんかイマイチよく解らないシーンがあったり、よく解らない繋がり方をしてたり、いや、何よりも全てを描き切らないうちに次のシーンに飛んでしまうようなところがある。
でも、そのよく解らないものの集積であるはずの映画はやっぱりよく解らないかと言えばその逆で、非常に印象深いのである。
主人公は世界的なバイオリニストで世界的な指揮者である。その彼が心臓を病んで療養のために田舎の村に引っ越してくる。彼が7歳まで住んでいて、苛めに遭って逃げ出した村だ。デビューのときに名前を変えているので、誰も彼だとは気がつかない。
人間嫌いで隠遁生活を送るのかと思われた彼だが、やがて教会の聖歌隊の指揮者になる。
そして、さすが世界的な芸術家たる者、とてもユニークな教え方をする。村の聖歌隊のメンバーはひとりひとり彼に魅了されて行く。一方で、田舎の村の保守的な人たちに典型的な反発も起こる。
このあたりのところはいくら文字で書いても実感を持ってもらえないだろう。何故彼に惹かれるのか、何故彼に反発するのか──それは画音一体となって初めて観客を納得させる、映画の「技」である。うーむ、よくこんな脚本が書けたものだ、よくこんな物語を映画にしようと思ったもんだと感心するのみである。
ちょっと『いまを生きる』を思い出してしまった。
これは「癒し」じゃないな。なんて言うかな、癒しよりももっと癒される側が主体的に関わっている気がする。言うなれば「再生」だと思う。主人公によって村の人間のひとりひとりが再生され、主人公もまた再生する。そして、時として再生は癒しより激しい副作用を伴う。
いや、くどくど書くのはよそう。観てもらったほうが明らかだ。これは映画でしか描けない世界だ。
歌声が映画の中で見事に活かされている。終わり方もとっても印象的。結構凄い映画であった。
Comments
この映画結構すきです。
確かに日本人にとっては重いところがあると思います。けんかしたり、叫んだり、感情を強く表したりするところが激しいところがいくつかあった。けど、自分の本音の気持ち、感情をなかなか口や顔に出し切れてない毎日をすごしている私に(他にも大勢いると思うけど)とっては凄い自分の本当に気持ちに気づかせてくれた映画でした。
Posted by: zaya | Thursday, February 14, 2008 11:36
> zaya さん
どうも古い記事にコメントありがとうございました。はい、良い映画でしたね。
Posted by: yama_eigh | Thursday, February 14, 2008 18:04