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Monday, November 06, 2006

MOON OVER the ROSEBUD

【11月6日特記】 ムーンライダーズの MOON OVER the ROSEBUD が発売になった。今年で結成30年。通算19作目のオリジナル・フル・アルバムである。発売日に Amazon から届いたのだが、時間がなくて昨夜初めて聴いた。

もう、何と言うか、愛おしい気持ちになる。彼らの30年が骨身に沁みる思いがする。

僕は前進のバンドと言われる“はちみつぱい”の頃から聴いているが、これほど毎回音の違うバンドはないだろう。到底同じバンドとは思えない。

アルバムにより曲により、カントリー調であったり、フォークっぽかったり、ウェスト・コーストであったり、サザン・ロックであったり、はたまたパンクになったかと思うとテクノに転じ、ある時はプログレでありある時はストーンズ並みのディープなロックに戻り、最近だったら聴く人によって「これはグランジだ」と言ったり「トランスっぽいなあ」と感じたりするだろう。

アルバムごとに少しずつ曲調を変えてくるバンドはあるだろう。長い年月を経て音楽性の変わってくるバンドもあるだろう。しかし、それぞれのアルバムで音が一変するバンドは他にはないだろう。あらゆるロックのジャンルだけではなく、中近東サウンドあり北欧風あり、かと思えば沖縄民謡が顔を出し、時にはヨーロッパの映画音楽になる。

それどころか、もっと凄いのは1つの曲の途中でサウンドががらりと変わってしまうところである。

ここ何年間かは、例えばAA’BAの繰り返しみたいな解りやすい構成を嫌って、AA’BAで始まって途中からCDCD EE’FG CDCDみたいな途轍もない展開で、とてもじゃないけど憶えられない歌が多かったけど、このアルバムでは少し整理され単純になったように思う。

転調あり変拍子ありあの変幻自在のめまぐるしい曲がある一方で、「もう少し工夫したほうが良いのでは?」と思うほど単調な曲もある。この辺が一筋縄では行かないバンドなのである。でも基本はロック。

歌詞のほうはここのところ「行き場のない中年の○○」みたいなテーマが多い。それは行き場のない中年のエネルギーかもしれないし、憤懣かもしれない。行き場のない夢かもしれないし挫折かもしれない。あるいはある時はそれは行き場のない愛であるかもしれない。ともかく狂おしいほどの詩である。そう、それはまさしく詞ではなく詩なのである。

思えば僕は独りっきりの30歳の誕生日を、ムーンライダーズの「30 Age」を聴きながら迎えた。

メンバー全員が作詞・作曲を手がけ、全員が複数の楽器をこなすマルティプル・プレーヤーでありヴォーカリストでもあり、全員がソロ・アルバムを発表しており、全員がアイドル歌手などのプロデュースをしたり彼らに楽曲を提供したりしており、他のミュージシャンのバックとしても重宝され、CM作品も多いが時には自らCMに出演したりもしている。

超絶テクの白井良明というギタリストの存在も大きな魅力だが、何と言ってもメンバーに武川雅寛という貴重な人物がいるところがミソで、彼が演奏するヴァイオリン、チェロ、マンドリン、トランペットがこのバンド独特の個性を決定づけている。

もし、あなたがムーンライダーズをあまりよく知らない人で、どれか1枚のアルバムを買って聴いたら、「ああ、こんなバンドか、あまり好きじゃないな」で終わってしまう可能性がとても高いだろう。だから僕はそんな聞き方はお薦めしない。

僕がそういう人にお薦めしたいのは少なくとも19枚のオリジナル・アルバムは全部買うこと。できれば何枚かあるライブ盤も揃えるのが良い。

そして、それを一気に聴くのではなく、30年かけてゆっくりゆっくり聴くのである。──そういう風にしてライダーズのファンは醸成されて来たのである。

僕がまさしくそうである。

手許にオリコンの SINGLE CHART-BOOK COMPLETE EDITION 1968-2005 があるのだが、これを見ると、元々シングル・カットの少ないバンドであるとは言え、30年も続いているバンドであるにも拘らず、チャートインしたのは1曲だけ、しかもたった1週のみ、95位である。

こんなバンドが何故30年も続いているのか、それを考えるとこのバンドの偉大さが身に染みてくる。そして、それ以前に、30年間もどっぷりと彼等の音と詩の中に身を浸している僕にしてみれば、それは既に僕の体内深いところまで沁みて渡っているのである。

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