豆乳の味
【10月2日特記】 僕は生まれてから長らくの間、豆乳を飲んだことがなかった。
会社に入ってすぐの頃、当時の部長に(どういう経緯からそういう話題になったのかは忘れてしまったが)「豆乳って飲みにくいんですか?」と訊いたら、部長答えて曰く「ああ、飲みにくい。バリウムのほうがよっぽど飲みやすい」。
僕が胃レントゲンで生まれて初めてバリウムを飲んだのはそれから10年以上も後のことだから、結局豆乳とバリウムとどちらを先に飲んだのか定かな記憶がない。
ただ、当時のバリウムは今と比べて遥かに飲みにくかったはずだ。そのバリウムのほうが飲みやすいと言うくらいだから、この部長よっぽど豆乳が嫌いだったのだ。人の味覚は様々である。
しかし、今から思えば、それはどう考えても一般的な感覚ではない。
バリウムを生まれて初めて飲んだ時、僕は「うむ、思っていたほど飲み辛いものではないぞ」と思った。
豆乳を生まれて初めて(部長発言を思い出しながら恐る恐る)飲んだ時は、「なんだ、豆腐じゃないか」と思った。拍子抜けした。
言うまでもないが豆乳のほうが飲みやすい、と言うか、豆乳に飲みにくいという要素はない。そう、豆乳は美味しいのだ。
最近、スタバのソイ・ラテを好んで飲むようになった。豆腐がこんなにもエスプレッソと合うとは知らなかった。
もう何年も前に定年退職したあの部長に訊いてみたい──「ソイ・ラテとバリウム・ラテとどっちが美味しいですか?」と。
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