『世界の日本人ジョーク集』早坂隆(書評)
【10月31日特記】 こういう本を読むのは僕ぐらいのもんだろうと、ちょっと得意になって注文したのだが、聞けばベストセラーのトップ10に入っていると言う。それを知って些かがっかりしたのも確か(すみませんねえ、ヘソマガリで)。
でも、基本的にこういうのは大好きである。所謂エスニック・ジョーク。差別スレスレのところで笑い飛ばすという指向性に惹かれるのである。
ところがせっかく世界中から面白いジョークを集めてきていながら、本全体としての印象はそれほど面白くない。
掲載されているたくさんのジョークと比べて、「地の文」と言うか解説の部分に面白味がないのである。いや、別に文章が下手だという訳ではない。ただ、あまりに普通、つまり別に面白くもない解説なのである。そこが物足りない。
こういう本では、傑作なジョークを中心に、それらを上回るほど抱腹絶倒あるいは辛辣で秀逸な解説がついていてこそ値打ちが出るのであって、単に適切な文章で繋いで行けば良いというものではない。
書物を物するということはそれほど恐ろしいことなのだと痛感した。
もっとも、そこまでのことを求めて読む人も少ないのかもしれない。だからこそベストセラーになるのだろう。
いずれにしても、日本人自身が、自分たちに向けられたタチの悪いジョーク集を読んで自らを笑い飛ばすというのはとても健康で趣味の良い読書である。こういう本を出そうと考えた著者の発想には素直に拍手を送りたいと思う。
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