« Communication Breakdown ! | Main | PFF in Osaka »

Saturday, September 16, 2006

映画『日本以外全部沈没』

【9月16日特記】 昨日、映画『日本以外全部沈没』を観てきた。

1日1回だけ、21:10からのレイトショー。会社の近くの映画館だったので昼休みに券を買いに行ったら整理番号8番。で、上映の時には立ち見になっていた。

うーむ、この映画は人によって評価・感じ方がかなり違うだろうなあ。
「映画を作るには金がかかる」というのがとりあえずの僕の感想。

河崎実監督については『いかレスラー』『コアラ課長』『かにゴールキーパー』をいずれも見ようと思いながら見逃してしまって今回が初めなのだが、初めて見る作品が原作ものというのは失敗だったかもしれない。

この映画は言うまでもなく『日本沈没』のパロディである。ただし映画のパロディではなく、映画の原作になった小松左京の小説をパロディにした筒井康隆の小説の映画化である。

だから、映画『日本沈没』をもじったシーンがあるわけではなく、『日本沈没』を観ていないと楽しめないということは一切ない。とりあえず、本家『日本沈没』の映画版とTV版で主人公・小野寺を演じた藤岡弘と村野武範が共演しているということと、地震学者の名前が原作と同じ田所であるということくらいを押えておけば充分だろう。

で、ガワの話はそのくらいにして中味の話だが、よくできたシミュレーションなのである。日本以外が全部沈没して世界中の人間が大挙して狭い日本に逃れてきたらどうなるか・・・。

全世界的に見ればかなり不謹慎な、そして、そんなに目くじら立てなければ単にバカバカしくておかしい映画である。

原作は30枚の短編だと言うし、昨今の国際情勢ならではの設定も盛り込んであるので、河崎監督オリジナルの部分が相当多いのだと思う。

何も知らないで見るのが一番面白いのでストーリーに関することは一切書かないが、この映画は「発想の勝利」とまとめることができる。
日本人の欠点を見事に突いた、毒のあるアメリカン・テイストのジョーク連発である。

単に面白おかしいだけでなく、例えば、主人公の新聞記者“おれ”の妻であるアメリカ人キャサリンが憧れの元オスカー男優(今はホームレスになっている)にめぐり合った時の台詞のやり取りなどはちょっと胸にズシンと来たりする(多分俳優の母国語による会話シーンだったからだろうなあ)。

最後はああいうしんみりした形にまとめなくても良かった、もっと毒を含んだままバッサリ切り落としてしまう終わり方のほうが良かったのに、と僕は思うのだが、でも、一般向けにはあれで良いのかな。

ただし、映画としてはめちゃくちゃチャチでチープである。普段いろんな映画を見て目が肥えてしまっている観客にはちと酷ではないか。もちろん監督自らそのチャチさを楽しんでいることは充分に判る。でもなあ、チャチさを楽しまれてもなあ、という思いが拭えない。

笑いを取る部分は良いのだけれど、どうしてもそれらを繋ぐ部分が綻んで見えてしまうのである。

結局映画を作るには金がかかると言うことである。
これはあまり金をかけずに作った映画である。
その分、映画になりきっていないとも言える。

パンフレットの Production Note を読むと撮影期間が1ヶ月未満であることが判る。そこからも類推できるようにそそくさと撮った映画なのである。

そもそも金がかけられないからロケハンも安易(それが如実に映画のリアリティを下げている)。俳優の拘束時間を長くするとギャラがかさむのでそんなに入念な演出やリハも重ねられない。カメラワークや照明にも凝っていられない。

どうせなら全編コント仕立てでギャグが途切れなく続くような構成にすればチャチさは吹き飛んだのだろうが、そこまでの金も時間もない(コントはリハーサルと手直しにものすごく時間がかかる)。

だから、村野武範や寺田農らの俳優は笑いを取る部分でも振り切れていないし、通常の芝居においても締まりがない。小橋賢児にしても柏原収史にしても、普段はもっと上手い役者だぞと思う。演出不足なのである。その原因は金がないことだ。

金があるなら、お笑いスター総動員のキャストにする手もあっただろう。

ああ、これをフジテレビにやらせたらどんだけ面白いものができたかなあと思うと少し残念である。結局稲川素子事務所が嬉しい大量発注を受けたということだけが残るのか。

ただし、右田昌万と河崎実の脚本には非常に才能を感じる。金をかけずにチャチに作ったことについてもむしろ監督が目論んだ線に沿っているのだろうし、何等恥ずるところはないのだろう。あとは観客がどう捉えるかだ。

僕はこれは舞台(演劇)向きだと思った。演劇にすると背景や特撮は観客の想像力の中で勝手に立派に構成されるので、映像のリアリティのなさが払拭されるのではないかと思う。

どこかの劇団がやってくれないだろうか。きっとうまく行くと思うのだが・・・。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

アロハ坊主の日がな一日
日っ歩~美味しいもの、映画、子育て...の日々~
よしなしごと
長江将史~てれすどん2号 まだ見ぬ未来へ
犬儒学派的牧歌
シェフのきまぐれシネマ

|

« Communication Breakdown ! | Main | PFF in Osaka »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/110115/11916569

Listed below are links to weblogs that reference 映画『日本以外全部沈没』:

» [ 日本以外全部沈没 ]せま〜い、くだらな〜い [アロハ坊主の日がな一日]
[ 日本以外全部沈没 ]@渋谷で鑑賞 日曜日のレイトショーなのに、大入り満員。 筒井康隆らしさ満載の、ナンセンスパニック小説(?)の映 画化。 監督は[ いかレスラー ][ コアラ課長 ]、そして[ ヅラ刑 事 ]と近年出す作品が大当たりの河崎実。もちろん企画は 叶井俊太郎。そして巨匠の実相寺昭雄が監修を手がけている。 製作側のメンツを観ただけで、B級っぽさが漂ってくる。 ... [Read More]

Tracked on Thursday, September 28, 2006 at 21:44

» 日本以外全部沈没 [日っ歩~美味しいもの、映画、子育て...の日々~]
かなりチープな作りの映画でした。でも、そのチープさが本作の荒唐無稽な内容にぴったり合っていたと思います。 日本人の排他性、島国根性、傲慢さといったものがたっぷりとブラックに皮肉られています。ありえない世界の中での人々の行動に、「こういうことがあったら、こんな... [Read More]

Tracked on Friday, September 29, 2006 at 07:03

» 【劇場鑑賞108】日本以外全部沈没 [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
64億420万人 日本以外の すべての外国人に捧ぐ 世界が沈んで 日本だけが残った 日本以外のすべてが沈没し 世界中から難民が押し寄せてきた 『日本は・・・永久に日本人だけのもの。外人どもには渡さん!』 北方領土 竹島 尖閣諸島は どうなって...... [Read More]

Tracked on Thursday, October 05, 2006 at 23:25

» 「日本以外全部沈没」見てきました。 [よしなしごと]
 日本沈没が日本のみならずお隣韓国でも大ヒット。(某ニュースによると韓国人は日本人が苦しむのが痛快らしい。)この日本沈没のパロディ日本以外全部沈没を見てきました。 [Read More]

Tracked on Friday, October 06, 2006 at 01:04

» ユーモア持って観ましょう(笑)、「日本以外全部沈没」 [長江将史〜てれすどん2号 まだ見ぬ未来へ]
テアトル梅田でレイトショー、終電で命かながら帰ってきたてれすどん2号です!?(笑)いやぁ傑作!!物語中で、元ハリウッド女優役の人が「安っぽい日本映画なんて出たくない」と言っていたが、その安っぽい日本映画がすばらしい☆☆(笑) [Read More]

Tracked on Friday, October 06, 2006 at 01:13

» 日本以外全部沈没:笑われているのは誰だ? [犬儒学派的牧歌]
★監督:河崎実(2006年 日本作品) 京都みなみ会館にて鑑賞。 ★あらすじ(Yahoo!ムービーよ... [Read More]

Tracked on Sunday, October 08, 2006 at 12:06

» 日本以外全部沈没 [シュフのきまぐれシネマ]
日本以外全部沈没  @チネチッタ 9月16日(土) 日本映画史上最大のスケールと興奮で贈るSFパニック・スペクタクル巨編!(??) 原典・小松左京、原作・筒井康隆、監修・実相寺昭雄、監督・河崎 実 本家は全く観たいと思わなかったけど、これはずっと観たくて... [Read More]

Tracked on Sunday, October 08, 2006 at 23:57

» 純ちゃんと晋ちゃんと北のひと。(!)~「日本以外全部沈没」~ [ペパーミントの魔術師]
まずはだまされたと思って公式サイトへ行ってくらはい。 http://www.all-chinbotsu.com/ 原典小松左京、もう何十年も前に書かれた筒井康隆さんの 「日本以外全部沈没」が 草薙くんでリメイクされた「日本沈没」の後をうけて、 ホンマにええんかいなこんなん公開してという ..... [Read More]

Tracked on Saturday, October 14, 2006 at 11:10

» 日本以外全部沈没 07014 [猫姫じゃ]
日本以外全部沈没 2006年  河崎実 監督   筒井康隆 原作小橋賢児 柏原収史 松尾政寿 土肥美緒 ブレイク・クロフォード 筒井康隆 何を隠そう、あたしは、筒井康隆さまの専攻違いの後輩です。 当ブログでは、通常、敬称略ですが、...... [Read More]

Tracked on Sunday, January 21, 2007 at 10:23

« Communication Breakdown ! | Main | PFF in Osaka »