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Sunday, September 17, 2006

映画『水蒸気急行』『ライブイン茅ヶ崎』

【9月17日特記】 昨日の記事に書いたように、PFF in Osaka で森田芳光の初期の8mm作品が2本上映された。

前にも書いたことだが、僕はとにかく彼の35mmデビュー作である『の・ようなもの』には椅子から転げ落ちるほどの大きなショックと感銘を受けたのである。1981年10月24日、梅田コマシルバー。

そして、その時買ったパンフレットに「『ライブイン茅ヶ崎』で注目を浴び」という一文があり、それ以来ずっと見たくて見たくてたまらなかったのである。

今回はその前作である『水蒸気急行』との併映である。maxell の協力でフィルムからアーカイブ化したとのこと。maxell さん、ありがとう!

とは言っても、アマチュア時代の作品であり、“実験”と言うよりも“習作”と呼ぶにふさわしい代物である。『水蒸気急行』なんか電車と風景しか出てこないんだから、これはかなりしんどい。

おまけに元々の録音状態が悪かったのか、あるいはフィルムが痛んでしまったのか、両作品とも音はかなりひどい。音声はまだしも、音楽はものすごい歪み方をしていてほとんど聴くに堪えない状態である。

で、先に『水蒸気急行』のほうから触れると、これは前述の通り電車の映画である。電車の外観、車内、車窓からの風景、それらの映像にFEN、日本のラジオのニュースや交通情報、東京オリンピックや高校野球の実況音声、そして若干の音楽が被る。──それが59分間延々と続くのである。

見初めてすぐに、「これは途中で寝るかもしれないなあ」と思ったが、これが意外に持つのである。

江ノ電、東京モノレール、山手線、東海道線、丸の内線、千代田線、小田急線・・・。見ながらこれらの区別がつく東京在住経験者のほうがきっと楽しい。

車窓から見える風景ったって、街とか木々とか海とかばかりではなく、まずすれ違ったり併走したりする別の電車の画があり、あるいはある時はひたすら線路であったり、高速道路の路面であったり、羽田に離着陸する飛行機であったりする(久しぶりに全日空の昔のマークがついたボーイング727や737を見た)。

撮り方も編集もまさに縦横無尽──やっぱり片鱗を感じさせる作品だった。

当時、自主映画としては異例の、銀座のホールを借り切って上映するという手法で破格の動員を記録したというだけのことはある。

続いて『ライブイン茅ヶ崎』。これまたひどい映画だ。

出演者は森田監督の親戚の青年とその友だち何人か。音は当然アフレコだが映像とずれまくって台詞なのかナレーションなのか区別がつかない。おまけに棒読みに近い下手糞。

茅ヶ崎でデートする青年とその彼女、彼らとつるんでる近所の青年たちの日常。デートったって車で走って海岸やくさむらを歩くだけ。遊ぶったって夜廃墟になったガソリンスタンドにたむろして煙草吸ったり麻雀したり車で東京まで出かけたりする程度。

多少の物語は仕込んであるが、まあ退屈な日常であること!

ところがこれも見ていて飽きない。どころか『の・ようなもの』のシーンを髣髴させる。

構図と編集、照明の当て方、カメラを使った様々な遊び──ここで森田芳光が試したことがみんな後の作品に繋がって活きていると思う。

「栴檀は双葉より芳し」などという古い諺を思い出してしまった。

この作品を作った後、森田は家を抵当に入れるなどして(家ったって自分の家じゃなくて親の家だと思う)当時の金で3,000万円を工面し、それで『の・ようなもの』を撮ったという(今回上映前に流れた PFF in 東京でのトークショーを見て知った)。そうか、その金の一部で秋吉久美子をキャスティングしたわけだ。

途轍もない大勝負である。ところがこれが高い評価を得て、現在の森田芳光があるのである。すごいよねえ。

ところで、その『の・ようなもの』のDVDが漸く発売になったとか。
もう1回観たいなあ。今度はそんなに驚かないだろうけれど、その分もっともっと楽しめそうな気がする。

【9月24日追記】

★あまりに奇遇なので下記のサイトから逆トラックバックさせていただきました。

古今東西座

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Comments

コメントありがとうございました。大阪でも少し遅れて(?)上映したんですね。それ自体当時の事を考えれば稀なような気がします。それにしても1981年は面白い映画が多かった年という気がします。僕的には東の『の・ようなもの』西の『ガキ帝国』という位置づけでした。

Posted by: 丹下段平 | Sunday, September 24, 2006 21:41

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前の記事もそうだったが、この映画も観たのは渋谷だった。渋谷で映画を観ることは少ないのだが、映画祭他イベント等が多く、想い出に残る事が多い。 この映画も今は無き渋谷駅前の東急文化会館6階にあった東急名画座(当時の名称)で観た。しかも初日に! 何せ1981年9月12日の出来事である、詳しくなんて覚えていない。ただ、この映画は画期的だと感じたことは覚えている。この頃の日本映画で、これだけ軽~~~いタッチの映画が作られた事が奇跡的に思えた。シロート感丸出しの、あまりにも等身大な8mm映画的な作品は「ありえな... [Read More]

Tracked on Sunday, September 24, 2006 17:42

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