映画『インサイド・マン』
【6月24日特記】 映画『インサイド・マン』を観てきた。
この映画の批評で最初にこういうことを書く人はあまりいないと思うのだが、この映画はアメリカン・ジョークの宝庫だった。そういう意味でいかにもスパイク・リーという感じがして好感を抱いた。
冗談を言うような状況ではない場面での冗談──日本では不謹慎だと言われるような冗談が次から次へと飛び出してくる。でも、実はそういうときこそ冗談というものは必要とされるのである。日本もそういう世の中になればいいのになあとつくづく思う。
そして強烈な人種差別ネタ、冗談と言うよりはただの悪口(あっこう)。市長が個室に入ってホワイト弁護士(ジョディ・フォスター)と2人きりになった途端にめちゃくちゃ汚い言葉遣いになるシーンも笑えた。
──これらは決して人種差別を肯定しているのでもなく、下品な言葉遣いを奨励している訳でもない。プレッシャーだらけの世の中ではこのくらいのことが必要とされることだってあるのである。それは一種の潤いなのである。
さて、この映画は筋が全てであると言っても良いくらいの映画なので、ストーリーの紹介は最小限に止めたい。パンフレットも書きすぎているので買った人は事前に読まないように。
これは銀行強盗に入った一味の完全犯罪の物語である。そこにいろんなことが絡んでくる。──このくらいにしておこうかな。どこまでも怜悧な犯人と優秀な刑事の知恵比べ。そして、そこにいろんな予想外のことが絡んでくる。──まあ、この辺までか。
絶対にあまり知らないまま映画を観た方が面白いです。本当に良く出来た筋であり、よく転がる台詞回しである。脚本のラッセル・ジェウィルスはこれがデビュー作だというから仰天ものである。
でも、正直言ってちょっと複雑すぎて、映画が終わってからもう一度いろんなシーンを思い出しながら考え直さないとよく解らなかった。逆に言うと、観客に対してお節介に説明しすぎない映画だったということであり、そこに余韻があって良かったというのが僕の感想だが、そうは思わない人もいるだろう。
多分2度目に観たときが一番面白いのではないかな。1回ではちょっと、自分の理解が正しいのかどうか自信が持てない点もある。
でも、筋とか設定とか、トリックとか種明かしとかも確かに見事ではあるが、この映画に最終的に息吹を与えているのは冒頭で指摘したアメリカン・ジョーク満載の台詞であり、そのアメリカン・ジョークたっぷりに語られるサイドのエピソード集である。
僕はそういう風な見方をして、非常に面白かった。
ただ、隣で見ていた妻は「なんか消化不良」と非常に不満足の様子。
さて、あなたはどちらの感想を抱くのか?
デンゼル・ワシントン、クライブ・オーウェン、ジョディ・フォスターの3人の名優が期待通りの名演であったことは間違いないと思うのだが・・・。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました
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