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Saturday, June 10, 2006

映画『やわらかい生活』

【6月10日特記】 映画『やわらかい生活』を観てきた。

実はそもそも映画『初恋』を見に行ったのだが、整理番号を取ってから上映までに3時間の空きができてしまったので、その間に新宿武蔵野館から K's cinema に足を運んで、明日観る予定にしていたこの映画を先に観てしまったのである。(『初恋』については日付が変わってからアップすることにする)

K's cinema は初めて行った映画館だったのだが却々快適な施設である。新しくてきれいで見やすい。立ち見を出さないというポリシーも良い。東京にはこういう単館系劇場がたくさんあるところがうれしい。

定員84とキャパの小さい小屋とは言え満員である。終映後に舞台挨拶が組まれていたこともあるだろうが、その前の回も満席だったようで上々の初日である。

廣木隆一という監督は随分キャリアの長い人なのに、僕の記憶には名前さえ刻まれていなかった。にっかつロマンポルノ出身で、一般映画に転じてからの代表作は2003年のキネ旬3位に選ばれた『ヴァイブレータ』(主演・寺島しのぶ)。

「相米慎二ばりの」とまでは言わないが、長廻しが特徴的な監督だ。無駄にカットを切り替えず俳優にじっくり演技をさせている。そして、人の動きもカメラの動きも共にとてもなめらかで、緻密に計算された感じがする。観ていてとても心地良い。

屋上の洗濯物の周りを寺島しのぶが歩くシーン、寺島と妻夫木がタイヤ公園に入ってくるシーン、寺島のアパートを豊川悦司が初めて訪ねるシーン──大谷健太郎監督と組んで『約三十の嘘』『NANA』を撮った鈴木一博カメラマンによる長廻しはいずれもとても印象的だった。

そして何よりも驚いたのは、寺島と豊悦がカラオケボックスで歌うシーン。そのままほとんどフルコーラス見せて聴かせたのにはびっくりした。歌いながら何か別のことをする訳でもなく、歌っている最中に何かが起こる訳でもない。なのにフルコーラス映すなんて一般的にはありえない演出だろう。そして、それにも拘らず、2人の感情の動きは観客に見事に伝わってくる。

この映画の主人公は橘優子・35歳(寺島しのぶ)。キャリアウーマンとしてバリバリ働いていたのに、両親を亡くし、同じくキャリアウーマンだった親友を亡くし、自身も躁鬱病になって会社を辞めてしまう。

この優子に何人かの男たちが絡む。結びつけるのは愛であったり、親近感であったり、セックスであったり、血縁であったり。

「同好者」出会い系サイトで知り合ったKさん(田口トモロヲ)。そのKさんに蒲田に連れてこられた(場末の映画館で合意の上の痴漢行為を受けた)のをきっかけに蒲田に移り住み、蒲田の町に関するHPを立ち上げる。この蒲田の風景・環境もこの映画の魅力のひとつである。

そして、大学時代の同窓生で今は都議会議員の本間(松岡俊介)。優子のHPを見てメールを送ってきた鬱病のヤクザ・安田(妻夫木聡)。妻子を福岡に残して家出をし、優子の家に居候を決め込んだ祥一(豊川悦司)──映画は従兄妹同士でもある優子と祥一との関係をメインに据えている。

この映画は「頑張り過ぎない」ということが大きなテーマになっているようだが、僕自身が若かった頃の自分を追い詰めすぎる悪癖から抜け出て久しいこともあって、それほど大きな感動はなかった。

それから、監督自身が「病気の人特有の話ではない」と語っており、またパンフの別の箇所にもそんな記述があったが、僕の神経はどうも躁鬱病に向いてしまって、つまり病気の人特有の話と受けとめてしまった嫌いがあって、イマイチのめり込めなかったのも確か。

ただ、前述の通り絵作りは抜群に巧いし、ストーリーも良い。荒井晴彦の脚本も丁寧に言葉を選んで書かれており、全体に味がある出来になっていた。そして、豊悦も巧かったけど何と言っても寺島しのぶが抜群に(!)巧かった。

僕は元々この女優は好きではなかった。顔が嫌いだったのである。美男美女を両親に持ちながら、その2人から少しずつ顔の要素を持ち寄るとこんなブスになるのかと仰天して敬遠していたのである。どちらかと言えば父親似だが、古風な男前に似た現代女性は美人とは程遠い。

ところが、まず『赤目四十八瀧心中未遂』で驚いて、『春、バーニーズで』で溜息をつき、今は毎朝『純情きらり』を見ながら唸り声を上げている。こんなに巧い女優はめったにいない。彼女の演技を見るだけでもこの映画は値打ちがある。できればこの作品でも『赤目四十八瀧』で見せたようなヌードを披露してくれれば良かった。そのほうがもっとスムーズな映画になっていたと思う。

それから、優子がおじさんからの電話を受けていちいち復唱するシーンは興醒め。あんなに復唱する奴はいない。観客に説明するために役者に台詞を言わせてはいけない。

ちょっと貶した部分が多かったかもしれないが、僕自身は観て満足。高く評価できる映画だと思う。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

航  海  記
ライターへの道。女32歳の挑戦。
I N T R O+blog
soramove

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Comments

失礼します。同じ映画館で観てきました。
ストーリー的にやはり筆が進むというほど
の感銘はなかったものの、寺嶋さんのための
映画という感じがします。単なるぱっと出では
なく、文学座でのキャリアなど、サラブレッド
でありながら、それに自惚れることもなく
キャリアを築いてきた彼女はやはり凄い存在だと
思います。

Posted by: t@shi | Monday, June 12, 2006 00:44

> t@shi さん。コメントありがとうございます。

我々結構映画の好みが似てるんですかね?
でも、部屋にテレビないんですか。それはいけません。
なにしろ僕の収入源ですから(笑)
ではまた、今後ともよろしく。

Posted by: yama_eigh | Monday, June 12, 2006 09:46

TBさました。この映画の空気が好きです。

Posted by: DAO | Friday, June 30, 2006 13:14

> DAOさん

だおもありがとうございます。
はい、確かに良い空気の映画でした。

Posted by: yama_eigh | Friday, June 30, 2006 15:29

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