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Sunday, June 04, 2006

映画『BIG RIVER』

【6月4日特記】 映画『BIG RIVER』を観てきた。

冒頭で見慣れた「」の文字のロゴが出てきて驚いた。これはオフィス北野のマークである。北野武が絡んでいるわけでもなんでもなく、純粋映画投資のようである。

ロードムービーである。オダギリジョーが出ている。全編英語の日本映画である。舩橋淳(ふなはし・あつし)という監督は聞いたことがなかったのだが、予告編を見たときに「和製ヴェンダース」みたいなキャッチがついていたのに惹かれたのである。

どこか外国、多分アメリカ(これがアメリカ映画なら1も2もなくアメリカだと思うのだが、日本映画だと思って見ると考えてしまうところが我ながら面白い。後に舞台はアメリカ・アリゾナであると判明する)。砂漠の中をバックパックを背負って徒歩の旅をしている日本人・テッペイ(オダギリジョー)。荷物の大きさを考えれば野宿の用意が入っているのだろう。

空港で執拗な荷物検査とボディチェックを受けているアジア系の中年男(多分インド人かパキスタン人。ひょっとするとイランあたりかも──後にパキスタン人であることが判明する)。我々アジア系は米国入国の際によくこういう屈辱を味あわされる。

テッペイが炎天下を歩いていると、砂漠の真ん中で車が故障して困り果てている先ほどのパキスタン人・アリ(カヴィ・ラズ)に出会う。テッペイが修理してやったお礼に乗せてもらい、暫く走ったら今度はガス欠。テッペイがガソリンスタンドまで歩いてガソリンを買いに行く途中で白人の若い女・サラ(クロエ・スナイダー、うむ、綺麗な娘だ)にめぐり合う。

そうやって3人のロードムービーが始まる。

アリの英語がひどい。文字通りの片言。そのことで、パキスタンから出てきたばかりだということが想像できるが、なにしろあまり語らないので素性が良く解らない。暫く走ったところでサラの質問を受けて漸く、いなくなった妻を捜しに渡米してきたことが判る。

一方のテッペイはアメリカを横断して行く行くは世界一周を目指しており、特にアイスランドに行ってみたいと考えている。ま、若者の気楽な旅なんだろう。

サラの父親のトレーラー・ハウス(なんという殺伐とした生活!)に寄った後、テッペイとサラはモーテルで一夜を共にする。サラはテッペイにどんどん惹かれている様子なのにテッペイのほうはイマイチはっきりしない。

まあ、そりゃそうかもしれん。女のほうは明確に好きでなければ男を誘ったりしないのかもしれないが、男のほうは誘われれば大抵応じてしまうものだ。一度体を重ねたからといって、目をキラキラさせていきなり「2人でアイスランドまで旅しよう」と言われても、それは束縛でしかないのかもしれない。この時点では「憎からず」想っていてもあと一歩踏み切る気になれないテッペイ。

やがて、アリは妻を見つけ出すが・・・と、まあ、筋を書くのはこの辺りまでにしておこう。

しかし、若い2人の関係とアリの妻の行方だけで引っ張って行くのは少ししんどい気がする。いや、これはロードムービー特有の中だるみ感である。いつも思うのだが、どうやら僕はあまりロードムービーには向いていないようだ。

映像はとても美しい。ロングの画がものすごくロングである。日本だとカメラがこんだけ引くのは無理だ。圧倒的に雄大な自然の中で人物が文字通り米粒大になっているので、「この映画をTVでかけるのは無理かも」などと余計なことを考えてしまう。

空を入れるために人物のショットを少し仰角にしてみたり、見つけ出した妻をアリが問い詰めるシーンでは妻を切ってアリのワン・ショットにするなど人物の撮り方にも工夫がある。

『BIG RIVER』と言う限りは、最後に大きな川の畔にたどり着くか、キーになる台詞の中にその言葉が出てくるかのどちらかだろうと思っていたら、そのどちらでもなかった。多分これ自体が1つの比喩なんだろう。そこは観客に考えさせようとしている。終わり方も非常に両義的で、ある意味観客を不安にさせる──自分の感じ方・解釈で合っているんだろうか、と。

パンフレットの中で映画監督の吉田喜重が「映画は明確な意味を描くものと思われがちだが・・・」と、確固たる一定の意味づけを求める観客の態度を戒めるようなことを書いている。そう書きながら、彼はその文章の中でこの映画のいろんなシーンについて彼なりの意味づけを行っている。

それが映画と観客の関係なのだろう。そういう意味では大変スリリングな作品であったとも言える。終わり方が良かったね。で、1週間後どれくらい余韻が残っているかが勝負だね。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

アロハ坊主の日がな一日

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Comments

どうもです。
yama_eighさんには不評かあ~。

最近あんまり意見が合致しませんね。

Posted by: アロハ坊主 | Tuesday, June 13, 2006 at 12:33

> アロハ坊主さん

えっ? 結構褒めてるつもりなんですけど…。
まあ、貶してるとこもありますけど、全体的に貶してるように見えました?

なんでもかんでも描きすぎる映画が多い中で、こういう風にあまり語らず、両義的で、観客を不安にさせる映画って、僕は歓迎してるつもりなんですけど…。

Posted by: yama_eigh | Tuesday, June 13, 2006 at 13:28

はじめましてー。
私も「オフィス北野」でびっくりした部類です。
この作品は、なぜ?を問うてはいけない映画なんですね、きっと。オダギリ作品は、「ゆれる」が評価が高いようなので、楽しみにしたいと思います。

Posted by: カオリ | Sunday, August 13, 2006 at 16:00

> カオリさん

はじめまして&コメントありがとうございます。一般人で「オフィス北野」だと気づく人も珍しい。通ですね。それとも業界人ですか?

> この作品は、なぜ?を問うてはいけない映画なんですね、きっと。

そう、そうとも言えるし、見た後なぜ?を自問し続けても良いと思います。

最後に、「ゆれる」はすごいっすよ。良かったです。この映画を明確に貶した記事はまだ1つくらいしか目にしてません。みんな絶賛です。乞うご期待。

Posted by: yama_eigh | Sunday, August 13, 2006 at 16:14

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