『幸せになるためのイタリア語講座』
【5月20日特記】 今日は久々に WOWOW から録り溜めた映画の消化。『幸せになるためのイタリア語講座』。去年の7月に録画したものを今頃見てるようではあきませんわな。
2000年のデンマーク映画。ベルリン映画祭で高い評価を受けたとか。
乱暴に言ってしまうとどこかしら不幸な男女が6人。妻を亡くしたばかりの新米代理牧師(牧師の仕事に馴染めずヘマばかりしている)。インポテンツになって4年半もセックスしていないホテルの受付係。素行が悪くてレストランを馘になった男。アルコール依存症(なのかな?)の母親の介護に疲れきった美容師。高校を出てから40回以上転職している不器用なパン屋店員の女(ひねくれた父親との同居に辟易している)。デンマーク語がほとんど解らないイタリア人の若い女性。
その6人が市役所のイタリア語講座に集まる。そして3組のカップルが誕生する。──ただそれだけの話。
傷ついた人、心が弱っている人間は恋に落ちやすい。実際そんな風にして始まった恋が長続きしないことも多いのだが、彼らはどうなのだろう。この映画ではそんな先までは描かれていない。だけど、この6人の登場人物がみんな優しい目をしている。傷ついた人間に対する優しさを持ち得る人たちなのだ。
誰一人として知らないのだが、俳優たちがとても良い。
カメラワークに凝ったところはなく、人物に寄った画ばかり(時々不自然に更にグッと寄る)。ヨーロッパ映画に多いことだが、シーンの転換もやたらそっけない。
だけど、なんか心が温まる映画なのだ。何度も髪を切りに来るのに結局切らないまま美容院を出る男など、エピソードの重ね方も独特で面白い。
弱者、落ちこぼれた者、凡人、不幸な人──そういう人たちが一人ひとり守られ、赦され、背中を押されて立ち直り、癒されて行く。優しい目をした監督の微笑がスクリーンの向こうに見えるような気がする。いや、それは監督の存在ではなく、神の存在なのかもしれない。
ちょっと『かもめ食堂』を思い出したなあ。じんわりと温まって来る優しい映画でした。
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