『ザ・サーチ』ジョン・バッテル(書評)
【5月7日特記】 会社の同僚に教えられて生まれて初めて google を使った日のことをいまだに忘れない。
それまで僕にとってサーチ・エンジンと言えば yahoo! だった。ところが、まさに最初の検索結果が出た瞬間から、僕は筋金入りのグーグラーになって現在に至っている。
今でもほとんど例外なく最初に調べるのは google であり、かつ、それで満足な結果が得られず他の検索サイトに移ることはまずない。何らかの理由で特にカテゴリ型の検索をしようと思う時に yahoo! に手を出す程度である。
この本は画期的な google を開発した2人の大学院生ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンを中心に、サーチ・エンジンの歴史から google のライバル企業の動静まできめ細かに描いている。ちなみに「ページ・ランキング」のページがホームページのページではなく開発者ラリー・ペイジの姓であったとはこの本で初めて知った。
著者のジョン・バッテルはワイアード誌の共同創業者であり、ITバブルの中で起業して大儲けをしたかと思えば立ち上げた会社が倒産したこともある人物で、同じ業界の中から、言わばペイジやブリンの広い意味での同業者として早くから検索に注目してきたジャーナリストである。
そもそもこの本に興味を持った人なら、理解できないような難しい技術的な話はひとつも書かれていない。
バッテルが積み重ねてきた取材を再構成して、検索というものはいつどのように始まったのか、それまでの検索と google の方法論の決定的な違いは何か、ネット広告はどのようなビジネスモデルによるのか、google とそのライバル社は今後どのようなサービスを展開しようとしているのかなどを、ペイジとサーゲイの人となりにも触れながらスリリングに展開している。
特に第7章の google とSEOの果てしない戦い、そして言わばその戦いの流れ弾に当たってしまった中小企業の悲哀、第8章の検索とプライバシーの問題、第9章の google 上場を巡る顛末などが大変面白い。
読み始めてすぐのところにサーチ・エンジンの神髄を語った言葉がある。「わたしたちが入手できる情報量が爆発的に増えていくにつれて、検索エンジンはユーザーにとってインターフェースの隠喩(メタファー)となった」(11ページ)
──この本にはまさに検索エンジンがインターフェースのメタファーになる過程が描かれている。
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